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卒業式が済み、一颯達は、高校生でも 大学生でもない中途半端な期間に入った。 綉とあと一人、竹内という元クラスメイトと卒業旅行に行こうと言うことになり、打ち合わせの為に水野の店に向かっていた。 陸と再会したあの日。 綉と別れてから、水野の店に足が向かった。 自分勝手なことは分かっていたけれど、いつも無条件に優しさをくれる水野に癒されたかった。 「一颯くん!」 店の扉を開けると、水野はすぐに近づいてきて、ちょうど店内に誰も居なかったので、すぐに店を『CLOSE』してくれた。 ほんの1週間ほど会わなかっただけなのに、水野は「久しぶりですね」と言ってハグをしてくれた。 「うん……」 思ったより、沈んだ声が出てしまった。 水野は、心配そうに一颯の肩を抱き、いつものカウンターではなく、背もたれのソファ席に座らせた。 「何かあった?」 水野は、暖かいカフェオレを入れて一颯の前に置いてくれた。 「陸に……会ってきた」 一瞬、水野が言葉を失ったのが分かった。自分でも酷いことを言っているのが分かる。 「そう……ですか。元気でしたか?」 「ホストになってた……」 「そうなんですね。家族の為ですね、きっと」 水野は、陸を庇うように言った。 「1回この店の近くまで来たんだって。水野さんと手を繋いでるとこ見られてたみたい。幸せなのに、なんで会いに来たんだって言われた。笑いに来たのかって」 水野を傷つけることは分かっていたが、黙っていることは出来なかった。 水野は、黙ってゆっくりと一颯の背中をさすってくれた。 「大丈夫。本心なんかじゃないから」 優しく言われてまた涙が出てきた。 「なんで?水野さんは、なんでそんなに俺なんかに優しく……」 泣きながらそう言うと「何でだろうね」と言って、水野は一颯の肩を抱きしめた。 「一颯くんが傷つくところを見たくないのかもしれません」 「水野さん……。抱いて欲しい」 一颯が、そう言って水野を見ると、水野は少し目を見開いて一颯を見た。 「忘れさせてくれるって言っただろ」 「そうですね……」 水野は、そう言って一颯をソファにそっと押し倒した。
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