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授業が始まり、教科書を一緒に見る為に、一颯は隣に机を近づけた。 何だか分からないいい匂いがして、さっきから、気持ちがおかしな事になっている。 緊張気味に陸の方に教科書を寄せると「ありがとな」と耳元で囁かれた。 (やっば……) ドクン、と心臓が跳ね、ついでに下半身も反応してしまう。 「何赤くなってんの?」 陸がこちらを見て小声でそう言い、笑っている。 「な、なんでもねえよ」 「お前ってもしかして……」 「な、なんだよ」 「いや別に」 何か言いかけて陸は黙ってしまう。 こんな気持ちになったのは、本屋のお兄さん以来だ。 けれど、どうやってこの気持ちを始末したら良いのか皆目見当がつかなかった。 __ 授業が終わった途端、また二人して女子達に囲まれた。 陸が質問攻めされている。一颯も興味があったので、さり気ないフリで聞き耳を立てた。 「誕生日は4月10日。血液型はAB。兄弟は弟と妹。好きな食べ物はラーメン。好きな女の子のタイプは……」 そう言って陸は少し考え込んだ。 女子達は、それを固唾を飲んで見守っている。 一颯も、綉と話しながら片耳でそれを聞いていた。 「金持ちの女」 「え?」 一颯は、思わず陸を見た。 「やあだあ、相澤くんたらー!」 「ウケるー!」 女子達が爆笑している。 一颯だけが、何故か笑えずに陸の横顔を見ていた。
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