9

5/6
前へ
/47ページ
次へ
「大丈夫か?」 目をあけると陸が優しく髪を撫でてくれていた。 しばらく気を失っていたみたいだ。陸の方に身体を向けようとして、下半身に鈍痛を感じる。 「痛っ……」 腰から尻をさすると「悪かったな、無理に挿れて」と陸がニヤニヤしながら言ってきた。 「悪いと思ってねえだろ」 一颯は、そう言って陸の頬を抓る。 「うん、思ってない。やっと俺だけの一颯になったって、最高の気分だった」 「バーカ、このドS野郎」 そんなことしなくても、もうずっと前から、陸だけに心も身体も囚われている。 ひとつになれた幸せな気持ちで、一颯がキスをすると、頬を包まれて更に深いキスをされた。 どんどん舌を絡ませられ、また挿れられたら堪らない、と腕を突っぱねた。 陸は「おい、逃げんな」と面白がって、羽交い締めにしてきた。 「わあ、もう無理だって」 泣きそうになって言うと、陸は心から面白そうにハハハ……と笑いだした。 「風呂、入るか。綺麗に洗ってやるよ」 「いや、いいって自分で」 と言っているうちに、身体を抱えられた。 下半身に力が入らないので、陸の言うなりになってしまう。 風呂場に行くといつの間にか熱い湯が張られていて、陸は、一颯を抱えたままそっと湯船の中に入った。 「「はあー、気持ちいいー!」」 二人して同時に言い、笑いあった。 幸せは、きっとこんなカタチをしている。陸に抱かれて湯船に浸かりながら、一颯はそんなことを考えていた。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加