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保健室の手前でやっと下ろされて、ホッと息をついた。
授業中とはいえ、お姫様抱っこされるなんて恥ずかしくて仕方ない。
仕方なく保健室のドアを叩いて「失礼します」とドアをカラカラと開けた。
「センセー、怪我したー」
そう言いながら中に入ったが、生憎、保険医は不在だった。
「いねえな」
陸は、そう言いながらドアを閉める。
「俺が手当してやるよ」
と勝手に手を洗い、消毒液やらガーゼを物色し始めた。
「自分で出来るからいい」と言ったが、どうにも嫌と言わせない雰囲気で「そこ座れ」と命令された。
仕方なく丸椅子に座ってジャージをそっと目繰り上げると案の定擦りむいて血が出ている。
「痛そうだな」
陸はそう言って濡らしたガーゼでそっと血を拭ってくれた。
「痛っ」
思わず声が出てしまう。膝小僧を擦りむくなんて小学生以来かもしれない。
「悪かった」
「え?」
「あんな風にけしかけて悪かった」
傷を手当しながら陸が言った。
「や、まあ俺もムキになって悪かったよ」
素直に言うと陸は、顔を上げ真正面から一颯を見た。
「可愛いなって思ってた」
「は?な、何……」
カァ……と身体が熱くなってくる。
「ムキになってんのが、うちの小五の弟みたいでさ。可愛いなって」
「バカにしてんのか」
一颯がまたムゥっとすると、消毒液の付いたガーゼをギュッと押さえつけられ「いったあ!そっとしろよ!お前!」と一颯は声を上げた。
陸は、笑いながらもちゃんと手当してくれ、傷に大きな絆創膏を貼ってくれた。
「さんきゅ」
ジャージを戻しながら礼を言い、立ち上がると腕を掴まれた。
「え?なに」
「キス。約束したろ?」
「いや、してねえし!お前が勝手に……」
10cmほど上から色っぽい目線を投げかけられ、思わずその気になってしまった。
(まあキスくらいなら)
心の中で思ってギュッと目を閉じた。
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