4人が本棚に入れています
本棚に追加王子様の元へ
パーティは日が落ちるまで続き、やっとお開きになった。
ミレナは宝飾品がたくさんついた格好のまま、自室へもどった。
もうすぐ夜だ。クジラの話では、今夜王子様の誕生パーティが行われるそうだ。ミレナに眠気は無かった。
門番に見つからないよう、裏門からひっそりと宮殿を抜け出す。少し悪い事をしているようで、微かな罪悪感があった。それは、小さいころにイタズラをした気分に似ていた。
海上から上を見上げると、ほのかな光が見える。ああ、今夜は満月なんだなと思った。道理でサンゴがサワサワと興奮するのだなと納得する。サンゴは満月の日に出産するのだ。
頭上に大きな、黒い影が差し込む。これが人間の舟か、と感動した。こんなに大きなものは、海の生物の中には存在しない。
ミレナは懸命に尾びれで水を掻いた。腰の辺りが痛くなるが、そんなことを気にしている場合ではない。
あと2メートル、1メートル。
「ぷはっ」
ついに海面までたどりついた。
ミレナは髪を強く振り、水滴を落とす。
初めて吸い込んだ空気は、身体を浮かせるような不思議な感覚だった。大気の感触はとても軽かった。鼻を動かす。海中を泳ぐときよりも、潮の匂いが濃厚な気がした。空を見上げる。宝石をちりばめたような、赤や白、青色の星々がまたたいていた。
今夜は満月だ。目の前に豪華客船が見えた。
巨大な建造物。人間の知恵はこんなものを造り出せるのかとあらためて感動した。
甲板では陽気なリズムの歌が流れ、油を燃やした明かりが煌々と周囲を照らしている。
王子様はどこだろう。ミレナは舟を凝視した。
腰に長いものをさした、同じような服装の人物しか見当たらない。
きっと船の奥にいるんだわ、と少し悲しい気持ちになる。自分の成人式がそうだったからだ。一目でいいから王族と会いたい。ミレナは海面に浮かび続けた。

最初のコメントを投稿しよう!