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告白
さっきまで、綺麗な青空が広がっていたのに、今は嘘みたいにどんよりとして暗い空模様。
一つ、二つと空から降ってきた小さな粒は、今はバラバラと激しい音を立てて地面に落ちている。
「本格的に降ってきたな」
外の激しい音を聞いて、顰めっ面をしている人はあたしを見て困ったように溜め息をついた。
「何か飲みたいものあるかな?あゆちゃん」
「え?」
「確か、オレンジジュースが好きだったよね?今、持ってくるから適当に座ってて」
あたしは躊躇うように首を傾けて、しきりに瞬きをする。
あたしの様子を見て、ふっと柔らかい笑みを浮かべた。
「誠(まこと)さん。そんな気を使わなくても。突然、あたしが来てしまったのに…」
「今のあゆちゃんを見たら、誰だって心配をするよ?話したくないなら無理しないでもいいけど」
柔らかい笑みを浮かべていた人は、意味深にカウンターに座っている人へと視線を向けた。
「君は、どう思うかね?和文君」
「そうですね………、確かに誰だって心配はします。」
ふっと黒い笑みを浮かべて小さく笑う、その人に。
「なんでここにいるんですか?海原さん」
あたしは大きく首を傾けて問いかけた。
「誠さんの子供“愛花ちゃん”が高い熱を出してしまって。仕事へ向かう途中に連絡があったんだよ」
「愛花の事知っているよね?」
海原さんは、目の前に置かれているコップを取って口につけた。
豆から挽いたのか良い香りのする珈琲は、室内の雰囲気を変えるのは十分すぎる。
味わって飲んでいる海原さんを、誠さんはチラッと一瞬だけ見ていた。
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