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ど、どうしよう。お兄ちゃんだったら、と。
淡い期待と、胸の高鳴る音を感じながら携帯を開こうと手を伸ばそうとした時…。
ガラッと勢いよく扉が開いた。
「あゆちゃんじゃないか?なんで、こんな場所にいるんだ」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
おそる、おそる顔をあげると扉を開けている人は面白そうに唇を歪めて笑っている。
「……………一哉叔父さん。」
「誠さんはいるかな?」
外へ水飛沫を跳ねらせて、濡れた傘を閉じて開けていた扉も閉める。
「誠さんなら、奥の調理場へ行きましたけど」
顔が引き攣るのを感じながらも、あたしは静かに口を開く。
持っていた携帯は素早く鞄の中へ入れた。
「あ!なるほどね。凄い雨だから、今日はお客さんが来るのが厳しいかもしれないな」
ポンと頭を叩いて、しまったなぁと独り言を呟いている。
手を降ろした一哉叔父さんは、ぐるりと辺りを見渡す。
「……ところで、あゆちゃん一人だけなの?」
「はい、そうですけど。」
「こんな所で何をしているんだい?今の時間は学校だろ」
「……。」
一哉叔父さんは、不思議そうに首を傾けている。
けれど、何故か目は笑っていた。
「ダメじゃないか、黙っていたらわからないぞ」
腰に手を当てて、盛大な溜め息をついていた。
「一体、何のご用ですか?誠さんに」
「誠さんに用事では無くて、愛花ちゃんに会いに来たんだけどな」
「愛花ちゃんなら、ここにいませんよ。」
いつのまにか、話を終えた海原さんが後ろに立っていて、一哉叔父さんを冷たい瞳で見つめていた。
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