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「な? これはこれでありだろ」
再びめがねをくいっと中指で上げて、得意げにもう一人を振り返った。
「俺、騎乗位のがいい。せっかくコスプレだし」
お友達は長身の体を縮こめるような姿勢でパイプ椅子に座り、スマホを眺めながら答える。
上に乗っかるやつ?
「やったこと、ない…です」
「まじ? ハツモノじゃん。はやく代われよー」
俺はあのとき混乱と動揺でユウを殴ったんだと思う。
いつもの無表情で、義務感で。ユウは俺にキスをした。
まわりの友達が俺を押さえて止めた。女子は騒いでたっけ。かわいそう! 悠陽くんのこと嫌いなの!? って。
ちげーよ。逆。
好きだからだよ。
「出すときフトモモに噛みついていい?」
「変態」
「いいですよ」
あれ以来、俺は誰ともキスをしていない。
忘れないように。奪い去られないように。
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