1.センパイ

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「あいつともヤってんの?」 「…誰?」 薄目を開ける。 右の乳首を、親指とひとさし指でつまんでひねろうとしている。 「いつもいっしょにいる、でかくてまじめそうな男」 俺と「いつもいっしょにいる」のは、子どもの頃からひとりしかいない。 悠陽(ゆうひ)。 黒い髪は頓着しないから半端な長さで、服とかよくわかんねえ、どうでもいいってジャージも私服もほぼ黒一色、スポーツブランドでばかのひとつおぼえみたいにそろえてる。ひまがあれば近所を仏頂面でランニングしてる。俺はそれを家の窓から見てる。 「ま、ガタイが良くても別のとこもでかいとは限んないけどな」 その瞬間、俺はセンパイの股間を蹴り上げていた。 「いっ………! てえっ」 残念、ヒットはしなかった。 それでもセンパイは飛び退(すさ)って悶える。 「んだよ!? いきなり…」 上半身を起こして、椅子の脚をつかんで立ち上がる。 「へたくそ」 カッターシャツの前かき合せながら、扉を音を立てて開け放つ。 ユウは、そんなんじゃない。全然、そんなんじゃない。
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