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でも俺たちは親に養われているただの高校生だからどこにも行けない。
廊下を通って昇降口前の吹き抜けに出る。目鼻をくり抜いたオレンジや黄色のかぼちゃが飾られている。
「俺のこと送ってくって、バレー部のひとに言った?」
途中で体育館に寄った。離れて待っていたから、ユウが練習を休む理由をなんて話したかはわからなかった。
「言った」
馬鹿正直。俺はうれしくなってつい笑う。
ついでにやきそばパンを今食べたいとだだをこねてみる。このままだと、まっすぐ家に帰らされそうだから。
しょうがねえな、と言って適当なベンチに座らされる。やった。
「ハロウィン来る?」
うちの学校は行事が多いことで有名だ。ものによってはテレビや新聞の取材まで来るらしい。
「うちの部は強制参加。先輩たちが乗り気で」
「へー、なにすんの」
「観客参加型のバレーのゲーム。仮装して」
「なんのカッコするの」
「まだわかんない。先輩に命令されたら何でも」
骨の髄まで生真面目な体育会系だな。
袋にぎゅうぎゅうに詰められてつぶれたやきそばパンを取り出す。
「食べさせて」
俺、保健室に行くくらい具合が悪いんだもん。ヤってたからだけど。
ユウは俺の顔を見る。
「…まだ体調わりいの? だったら食ってなんていないで早く帰った方がいいぜ」
泣けるほどの正論。
「…おなかすいたんだもん」
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