2.やきそばパン

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あんな生白いテニス部員じゃ足りない。 口を開けて待つ。本当はほかのものを突っ込んで欲しいけどがまんする。 ユウはパンの包装をばりばりと音を立てて剥く。開け口もシールも無視。透明のフィルムはななめに裂けてしまう。 粗雑なその手つきで触れられたら死んでもいい。俺がそう思っているのをユウは知らない。そして、その思いを知られたら俺は死ぬ。 出口なし、だ。 「ほら」 口の前に差し出されたやきそばパンに、がぶりと噛みつく。 「いてっ。アキ、指まで食うなよ」 「あ、ごめーん」 心無い謝罪をする。 ユウの指、一瞬噛んだ。噛みたかったから。硬くてごつい。 ったく、とつぶやいてユウは中指を見つめる。 「血出ちゃった?」 そんなに強くしたつもりないんだけど。 「ソースついた」 ユウは自分の指を唇にあてる。それから、舌で舐めとった。 途端に心臓が跳ねる。なんでそんなことするんだよ。俺は反射的に目をそらす。 赤い舌先が焼きついてしまった。ほんの一瞬のことなのに。 ユウはのんきに俺がかじった残りのパンを食い始めた。やっぱうまいな、なんて言う。
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