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これを見て、牧田は舌打ちした。
「この欲張りめ、冗談じゃねえよ。テレビカメラの映像を消すだけでもべらぼうに金をとられるのに、これ以上、あんたにむしられてたまるかよ、それにお面や匂いがついた服を着たって、中身が俺なら犬はすぐ気がつくじゃねえか。畜生、だから生き物は面倒なんだ……。そうだ、ひらめいたぜ、もし、ワン公を殺したら?」
「死ねば、侵入者ありとロボットが判断しちまうよ、ワン公の心臓音と脈も探知するからな」
「じゃあ、エサで誘って、首輪を奪うというのは?」
「首輪はパスワードと主人の指紋と声紋認証で外すんだ。奪うのは無理だぜ、おまけに外した途端に脈と心臓音が消えるだろうが、それじゃ死んだのと同じになっちまう」
「くそ!」
牧田は地団太を踏んだが、そこはプロで対策を考えて準備を整えると、ターゲットの家に乗り込んだ。
「へへへへ、眠らせてしまえばいいんだ」
だが、意外や意外、窓からクロロホルムを流したものの、結局セキュリティロボットに捕まってしまった。
あっという間に手足を樹脂で固められて、もう、逃げようとしても逃げられない。
「くそお! こんなバカな!」
床に転がった牧田は犬の顔を見て愕然とした。
「なんだ! あれは! こん畜生!」
犬は主人が留守中に吠えて隣人に迷惑をかけないように、吠え声の消音用マスクをしていたのだ。もちろんクロロホルムや毒ガスを呼吸しないようにガスマスクの機能もある。
牧田は、ロボットからの通報で近づいて来るパトカーのサイレンの音を歯ぎしりしながら聞いているしかなかった。
了
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