青い鳥も珈琲を飲む

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

青い鳥も珈琲を飲む

 今日は何をしようかしら。  手探りで幸福の糧を確認し続ける日々。行き交う私と同じ形をした生き物は、社会に食い下がりしがみつき死んだ瞳で砂でできた硬い床を睨んで進む。楽しいという感情は何処へ捨てたのだろう?その問いは私にも降りかかることが多いのだけど。  何気ない一日を有意義な日々にする為に、今日もまた、スマートフォンゾンビとして電子の海に溺れる。今日は、交通安全週間だったっけ?だから、こんなにも警察が多いのか。これじゃ、赤信号のときでさえスマホをいじると声掛けられそう。  『おしゃれ カフェ』検索エンジンは高速回転で突き走る。私はと言うと、赤信号を待ち続けてブレーキを踏み続ける。良いとこみっけ、ここ行こう。クチコミ少ないけど、その全てが高評価。青い鳥でも少ない投稿。私が見つけたと言っても過言じゃない。私だけが知る店の場所。  青信号で思いっきり行ってみたい欲を出してみる。でも捕まらないようにゆっくりと踏み締めて。オービスが光るまで思いは前へと、警察の目には後ろめたさを。  そろそろ、目的地に到着する。どこだろ、ここら辺だったはず。当たりを見渡す私の視界には、真新しい世界が広がっていた。知らないものを見つめるって、こんなに時間が過ぎるもんだっけ?  到着したこの店は、ネットで見た通りの光景だった。人が少ないのも好条件。これで私の投稿難民回避。珈琲一つ、注文してから、カウンターに座る。届いた湯気の熱風は、私の期待に応えてくれた。大きく吸った空気の中を香りの粒子が溶け込み、私の血液に混ざり込む。飲み込むの度の微かな温もりは、誰かへと綴られる感情を表した。  ここ見つけてよかった。 この言葉で全て尽きていた。  忘れないうちに写真を撮った。小鳥に手紙を加えさせて、運ばせる。どこまでもいけ私の楽しみ。  誰かに届け、私はここと。 次は誰かと来てみよう。  孤独を好む私の心に、先程の温もり。 やはり、私の居場所探しは楽しい。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!