エピローグ

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『隼人は昔から異性に対しても冷めていたし、結婚もどうせ親の意向で無理やりさせられる、なんて話していたから。直子との件も聞いていたし、未希さんとも割り切った関係かと』  徳永さんの勘違いも無理はない。実際、雇用関係があっての結婚だったがそこまでは説明しなかった。すると話を聞いていた直子さんが柔らかく口を挟む。 『でも未希さんといるときの隼人さん、表情も柔らかくて幸せそうで驚きました』  そう話す直子さんもとても幸せそうだ。父親である水戸社長に結婚を勧められお互いに気持ちはないと確認したうえで隼人さんと会ってはいたものの、別の機会に会って親しくなった徳永さんの存在が気になっていたらしい。  とはいえ父親の手前もあり、そう簡単に言い出せずにいると、隼人さんから関係の解消を言い渡されたそうだ。 『汚れ役を隼人さんに押しつけてしまい、申し訳なく思っていたんです』 『気にしていませんよ。あなたが幸せそうだと水戸社長も喜んでいると聞きました』 『そりゃ、俺が相手だからな』  すかさず徳永さんが口を挟み、隼人さんは冷たい視線を彼に向け、私と直子さんは顔を見合わせて笑った。  今日の披露宴は徳永さんと直子さんも出席してくれている。隼人さん側の友人代表スピーチは徳永さんがすると聞いて、高校生の頃の隼人さんの話を聞くのをひそかに楽しみにしていた。  今日の挙式は人前式を予定している。
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