第七章 公私混同してしまうので退職願を出したいです

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「これ以上していたら、キスだけで終われなくなる」  その声はどこか切羽詰まっていて、表情にも余裕がない。けれど彼は苦々しく笑った。 「でも未希に無理をさせるつもりはないんだ。体調だって」 「あの」  隼人さんの言いたい内容を汲んで、私が声をあげた。そうだ。元気になったらちゃんと話すと言いつつ、彼を拒んだ理由を本人に伝えていなかった。 「違うんです。あのとき、その、先に進めなかったのは、隼人さんとの関係を改めて思い出したからなんです。それから前に付き合った人にいろいろ言われたのもあって……」  私の言葉を聞いた隼人さんは目を丸くしている。彼がなにか言う前に、一番の理由である自分の気持ちを正直に伝えることにした。 「なにより、あのまま抱かれていたら……もっと隼人さんのことが好きになりそうで怖かったんです」  言いながら恥ずかしさで声が小さくなる。でも本当のことだ。 「今は?」  不意に隼人さんに尋ねられ、私は少しだけ答えに迷う。 「今も……怖いです」  そこで一呼吸忍ばせ、思いきって先を続ける。 「だって、こんなに好きになって苦しいのも、愛されたいと思うのも隼人さんが初めてなんです」  決死の思いで告白したら、次の瞬間隼人さんにきつく抱きしめられ、私の足は床から離れた。 「あっ」  小さい子どもみたいに彼に抱き上げられ、急に視界が高くなる。
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