第一章 代打ですが仕事は完璧にこなします

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「伯母さん、ごめんなさい。昨日伝えた通り進藤さまの件は」 「それが進藤さんから連絡があって、引き続き未希にお願いしたいって」 「え!?」  私の発言を遮り、告げられた内容に驚きが隠せない。  戸惑う私に伯母はにこりと微笑んだ。 「未希の仕事ぶりを見てだそうよ。未希は最初、自社の社長だからってためらっていたし、昨日は年齢を気にしていたけれど、ちゃんと評価されていたのね」  伯母から伝えられた言葉を額面通りに受け取っていいものか。とはいえここで、他の人のシフトをずらしてまた組み立て直すのは、それはそれで大変だ。伯母の負担は極力減らしたい。心理的な面でも。  元々細いのに鎖骨が浮き出ている様子は指摘しないが痛々しい。一見元気そうでも目眩や倦怠感で思うように仕事ができないのを悔しく感じているのは伯母自身だ。  昨日の社長とのやりとりの詳細を言うべきか迷い、すべてを呑み込む。 「なら、よかった。社長の姪として仕事の出来で交代を言われたら、立つ瀬がないもの」  軽口を叩く私に伯母は嬉しそうに目を細める。 「本当、まだまだ子どもだと思っていた未希がいつの間にかこんなに立派になって……」  しみじみと言う伯母に苦笑する。まるで実の母のようだ。 「そうよ。今の私があるのは伯母さんのおかげなんだから!」 「なるほど。つまり私が立派なのね?」 「そうそう」  テンポよく返して、伯母と顔を見合わせて噴き出した。 「嬉しいこと言ってくれるわね。ほら、ご飯食べていくでしょ?」  当然と言わんばかりに中へ入るよう勧められ、私も続く。実の母以上に彼女のことは慕っているし感謝していた。むしろ伯母が母親だったらどんなによかっただろうかと何度も思った。
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