第一章 代打ですが仕事は完璧にこなします

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「ちなみにお砂糖やミルクはどうされます? ブラック派ですか?」 「用意されていたらどちらも入れるが、家では面倒だからブラックだ」 「好みの問題じゃないんですか」  思わず呆れた調子で返してしまい、ハッと我に返る。さすがに馴れ馴れしすぎた。 「あの、家事を代行する際に私が社長のためにコーヒーを淹 れる場合もあると思いまして」  視線をコーヒーメーカーに移して、しどろもどろに言い訳する。けっして興味本位ではなく、必要だと感じたから尋ねたのだ。  とはいえ彼はどう思ったのか。ちらりと隣を見ると、なぜか社長もこちらを見ていた。不意に視線が交わり、彼の形のいい唇が動く。 「君は?」 「え?」 「コーヒーになにを入れる?」  私の情報は必要なのかと思ったものの今コーヒーを淹れているからだ、と自分の中で結論づける。逆にしかるべき理由がないと答えていいのかわからなかった。 「私は……あったらミルクを少し入れます」  小さく答えると社長は踵を返し、うしろの棚の引き出しを開けはじめた。一通り中を確認し、次に冷蔵庫を開ける。  その様子を見守っていると、社長はため息をついて視線をこちらに寄越した。 「やっぱりコーヒー用のミルクはないみたいだ。牛乳でいいか?」  まさか彼が私のためにミルクを探していたとは思わず、目を丸くする。 「か、かまいません。お、お気遣いなく」  そこで言葉を切り、一瞬だけ迷ってから私はさらに続ける。 「わざわざ……ありがとうございます」  そこでコーヒーが落ち切ったので、社長は慣れた様子でカップを出した。注ぐのは任せて、テーブルに運ぶのは私がする。
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