第一章 代打ですが仕事は完璧にこなします

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「その女性が、はっきり言うとあまり仕事ができなかった」  なるほど。どうしてもこの業界は経験がものを言うところがある。研修をまともにせず、いい加減に派遣する会社もあるし、そうではなくとも私みたいな若い女性より、長年主婦をしている層は、それだけで信頼が厚い。 「とはいえ、新人かもしれないからと思って、こちらもあまり強く言わずに長い目で見ていたんだ。そうしたら彼女、こちらの仕事や年収、プライベートなことをあれこれ詮索するようになって……」  ため息をつきながら続けられた内容に、私は落としていた視線を上げ、目を剥いた。 「さすがに会社に訴えて担当を替えてもらったんだが、それから個人的に連絡をされるようになって、家も知られているからつきまといもあって、さすがにあれには参った」  苦々しく語られる事情に、社長は自嘲的な笑みを浮かべているが私はまったく笑えない。 「それはひどいです! ありえません!」  思わず叫んでしまい、今度は社長が目を丸くして私を見た。カップを握る手に力が入る。これが社長のものでよかった。自分のカップなら危うく投げつけてしまっていただろう。お腹の底から湧き上がる感情がマグマみたいに熱い。 「その人、若いとか経験が浅いとかそういう問題じゃありません。プロ失格です。この仕事はただでさえご依頼主さまのプライベートなところに踏む込むものですから、相手との信頼関係は大切なのに……。その人の行為は、派遣された会社だけでなく、同じ業界で頑張っている人にも失礼です!」  一息で言い切り、肩で息をする。感情の昂りを自覚しつつ脈拍も速くなっていた。
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