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ヴァージンロードを一緒に歩く父親はおろか、母親もいない。それだったらと、隼人さんから提案されたのだ。式場へは最初からふたりで式場にすることになっている。
会場ではすでに伯母をはじめ、友人や会社の同僚が揃っているだろう。推薦と簡単な試験を受け、この四月から私は正社員として昨年度に引き続き第一営業部で働いている。
隼人さんとの結婚するタイミングと重なったことでいろいろ言われるかと思ったが、その心配はなく皆、正社員への登用も結婚も祝福してくれた。
『沢渡さんの真面目な性格や仕事ぶりはみんな わかっているからね』
篠田部長に改めて言われ、なんだか照れくさくなる。
逆に木下さんは、仕事中にお客さまの前で派手に橋本さんと揉めたらしく、彼もまた橋本さんとは違う支社へと異動になった。
橋本さんにしても木下さんにしても同じ部署で誰も庇う人がいなかったのが、なんとも言えない。今、ふたりがどうしているのかは興味もないし知ろうとも思わない。
「未希」
名前を呼ばれ前を見ると、すでに扉の前で待機していた隼人さんがいた。光沢のあるシルバーグレーのフロックコートを着こなし、黒髪はいつもよりしっかりとワックスで上げている。モデルと言われても信じてしまいそうだ。
「隼人さん」
自然と笑顔になり彼の元へ進む。
「すごく素敵です! 隼人さん、なにを着てもお似合いですが今日は一段と」
興奮気味に話す私に対し、隼人さんはこちらをじっと見つめたままだ。その視線に私は言葉を止め、彼に尋ねる。
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