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第一章 代打ですが仕事は完璧にこなします
新年を迎え、初詣やお節料理など正月らしい正月を堪能(たんのう)したら、四日から通常モードになるのが社会人の悲しいところだ。学生時代は冬休みというものがあったが、さっさと気持ちを切り替えないとならない。
スーパーや雑誌の特集などはとくにわかりやすく、気づけば次のイベントのバレンタインデーに向けてせっせと宣伝をしている。こうやって時はあっという間に流れていくのだろう。
私、沢渡未希はどちらかといえば冷え性なのでこの時期は本当につらい。足先と指先がすぐに冷えてしまうので、カイロは必須だ。夜、なかなか眠れないこともしばしばある。これは子どもの頃からだ。
肩につくかつかないくらいで揺れる髪は、黒に近いダークブラウンに染め、お団子にしてすっきりまとめている。身長は百五十七センチと平均的で、ついでにスタイルも普通。
細身だと言われるが、女性としての可愛らしさや艶っぽさはこの年になってもまったくない。大人になったらそういうものは自然と身につくと思っていたが、どうやら違うらしい。
丸顔で、目も大きい方だが、やや垂れているからかどうしてもおっとりした印象を抱かせてしまう。もっときびきびした大人の女性になりたいし、見られたいのに。
マンションのエントランスに入ると、中は暖色系のダウンライトに照らされ、ホテルのロビーさながらの広さがあった。あちこちに観葉植物や花が飾られ自然豊かな空間に仕上がっている。
住人の姿は見えないが、気品あふれるコンシェルジュの姿からも、なんとなく自分が場違いだと感じる。
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