隠居妃はここにいる

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 ローガンの言葉がグサリと心に刺さった。いつも彼と口喧嘩のような言い合いをしているミアも口を閉ざしていた。 「あと少しで14年です。中途半端な立場を終わらせる時期だと思います」 王族でもなく平民でもない。国事に携わらず、ギルドで働いているとはいえ、この村の一部でもない。ローガンの言う通りだった。第ニ王子妃になるか平民になるか。どちらにしても王と連絡を取らなければならない。いつまでも今のままでは居られないのだ。  王族の立場に戻るには赦しを請う必要がある。自分の価値を示し、維持する。そしてやっと王子妃でいられる。様々な思惑と立ち向かいながら自身と大切な人達を守ることができるだろうか。前のように陰謀に負けたら……次、毒で倒れるのはミアやローガンかもしれない。ライリーは自分の想像に恐れ、身慄いした。   では平民になるのはどうだろう。『王子妃としての立場を捨てる』と宣言し、この村で……否、どこでもいい……どこかで今のように落ち着いた生活を送る。できないことはない。でもその時は独りだ。ミアもローガンも所属としては王城だ。彼らはついてきてくれない。王城以上の収入源にはなれない。彼らを解放するのもいいかもしれないが、2人を王城の人達が心よく迎えてくれるだろうか。前の王子妃に従った人間を信用する者がいたとしても、少ないだろう。もしかしたら疑われ、酷い目に遭わされるかもしれない。  震えた手を握りしめた。考えられる最善は……。 「ローガン、ミア」 「「はい」」 「私、決めた」 ライリーは勢いよく立ち上がった。 「あなた達をディランに売り込む」 「え?」 「後ろ盾のない妃につくよりも第二王子の所属の方がいい。その為に彼の信用を得ようと思う」  信用を得て、身分を明かし、彼らの保護を願う。女好きで言動が少し派手だが、盗賊から商人を守る正義感はあり、村人の話にも寄り添う優しさもある。まだ出会って少ししか経っていないが、信頼はできそうだ。関わる内に胡散臭そうであれば、離れればいい。妃だと告げなければ簡単だろう。  自分の未来について考えることを一旦やめたライリーには頭を抱える侍女は見えていない。ローガンだけが微かに笑みを浮かべていた。
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