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車は中将通りを北上し、丁度、国際センターの前の信号を右折した所だ。
ここから三キロ程走ると左手にドラッグイチロウの看板が見えてくる。イチロウを過ぎて最初の信号を左に入った所の、住宅地に私の実家がある。
ここからの道程を一通り簡単に白虎君に口頭で伝える。
「簡単に言うと迂回って事だね」
─ ではないと思う。
最短距離を伝えているつもりだ。
多分カーナビもその道を指示するだろう。
右折してから五〇〇メートル程行ったところで、突然ウインカーが左に点滅し、車は左折を始める
「ちょ、ちょっと、どこ行くの? 」
「え? 舞ちゃんの家だけど? 」
これも毎度のことなのだが、正解を伝えても、彼が納得しなければその通りには動いてくれる事はない。
理由は全く理解できないが、伝えた道程に納得がいってないと言う事なのだろう。
左折した先五〇メートル程のところに小さな川が流れていて、突き当たりになる。
川沿いに走れなくもないが、遊歩道程度の細い道なので、普通の感覚の人はそこを自動車で走る事はない。
そして彼は、そこを走り始めた。何故なら、普通の感覚の人ではないから。
そして、二分後には思った通りの結末が待っていた。
我々を乗せた車は、まんまと黄色い逆U字の車止めに行手を阻まれ、にっちもさっちも行かなくなってしまった。
「ほらぁ、だから言ったでしょ。無理なんだって」
「やっぱり、川沿いを走ったから良くない事が起こったのかな? 婆ちゃんも言ってたしな」
─ いや言う事を聞かないからだ。そして、再び他で聞いた事がない民間伝承。婆ちゃんしか言ってないやつな。
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