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プロローグ
「本当に大丈夫? 」
交際して二年になる。
職場の同僚の紹介で知り合った茨木白虎はお世辞にも美男とは言えないが、何処か愛嬌のある目鼻立ちをしている。
眼鏡に隠された素顔を見る事ができるのは、この世の中で、この人の両親と私と、銭湯の脱衣所で一緒になる人くらいだと考えると、それが密かな自慢であるように思えてくる。
先週食事をした折に、そろそろ結婚を考えようと話し合って、急ピッチで両親に挨拶する段取りを整えた。
「一緒にお昼でも」という展開を避ける為、12:00の待ち合わせ。午後から自宅で父親が待ち構えている。
「お父さん、そんなに怖いの? 舞ちゃんからは想像できないな」
運転席で紫煙を燻らせなが、白虎君は未だに信じられないと言う顔をフロントガラスに向けながら何度も確認してくる。
─まあ、そんなでもないよ─
という答えを期待しているのかもしれないが、現実はそれ程甘くはない。
私の父は根っからの職人気質で、曲った事と浅い男が大嫌いなのだ。
白虎君は曲った人ではないし、浅い男でもないが、初対面でこの変人の良さに気づける人が果たしているだろうか。
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