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第2章 記憶 〜繋がり〜
「ひーなーちゃん!なにをしてるのー?」
後ろから、私を呼ぶ声がして振り返った。
「あ!つかさくん、今ねお城作ってるの!」
「そうなんだぁ!僕も作っていいかな?」
「うん!一緒に作ろ!」
つかさくん...。って誰の事だろう?
顔も声もボヤけててはっきりと姿が分かんないよ...。
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陽菜は、大丈夫だろうか...。
ずっと目を覚まさないし、うなされている。
俺に何か出来ることがあったらいいんだけどな...。
「うっ...うっ、つかさくん...。」
つかさって....。
もしかして記憶が....!
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司は、中学2年生の夏から学校に来なくなった。
司の家に俺だけは出入りが許されていたから、毎日の様に様子を見に行っていた。
でも、ある日、司は部屋で倒れていたんだ.....。
俺はすぐに救急車を呼んで病院へと運んでもらった。
気が気じゃなかった。あいつが病気だったなんて...。
司は数日間、眠っていた。
でも、少しだけ意識を取り戻した瞬間があった。
「蓮。元気だった?」
弱々しい笑顔で優しく喋りかけてくる司の姿に涙が止まらなかった。
「うっ、司。やっと起きたのかよ...。
ずっと、待ってたんだぜ!」
俺は、司の手を握って泣きわめいた...。
そして、意識がもうろうしながらも司は俺に言った。
「蓮...僕はもう長く生きられないって...。
どんどん体の衰弱が進んでいるから、もう手の施しようがないんだ...。
だから、僕から最期のお願いがある...。
僕が死んだら、引き出しに入っている手紙を皆へ届けて貰えないかな?」
最期のお願い....。
「分かった...。
俺が必ず届けとくから。」
俺は笑顔で答えた。
「ありがとう」
司の目からは、一筋の涙が零れている。
「おうよ!」
そうして、司はまた再び昏睡状態に戻った。
それから、1ヶ月が経った頃.....。
司は、眠るようにして息を引き取った...。
突然の事で頭が真っ白になる。
「おい、司、起きろよっ...。」
呼びかけても動かない...。
辛くて胸が張り裂けるように痛かった。でも、泣いている時間などは無い。手紙を必ず届けるって司と約束したんだから。
そう思い、引き出しを開けて手紙を取り出す。すると、沢山の便箋が入っていた。その中には、俺宛のもあった...。
「蓮へ
この手紙を読んでいる頃、僕はこの世にはいないと思う。だから、手紙を書く事にしたんだ。
まずは、ずっと毎日の様に僕と遊んでくれて仲良くしてくれてありがとう。
忙しいのに毎日のようにお見舞いに来てくれてありがとう。
そして、僕と親友になってくれてありがとう。
蓮と出会えて僕は幸せだったよ。
これから、沢山の壁にぶち当たって挫けそうになる時もあると思うけど、僕の分まで頑張って乗り越えて人生を楽しんでね。
それから、蓮に約束して欲しいことがあるんだ。
僕の愛した人...。
桜井陽菜を守ってあげて欲しい。そして、幸せにして欲しいんだ。
お願い出来ないかな?
後は、よろしくお願いします。
ー そして今まで本当にありがとう。
司より。」
やっぱり司は最期まで優しいな...。
俺は別れの挨拶も言えなかったと言うのに...。
「司...うっ、うっ...。
必ず、届けるから安心してそっちで待っててくれ。」
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確かその後に、佐藤香織と司の兄、翼に届けたんだったよな。
あとは、一人。それは、陽菜だ。
でも、今は過去を覚えていないらしい。
幼い頃1度だけ陽菜に会った時に教えてくれたんだ。
ショックな事があると記憶を一時的に無くしてしまう病気があるって言うことを。
それは分かっている....。
でも、君には絶対、記憶を....司を思い出してもらわないとダメなんだ。あいつとの事を忘れてしまったらいけないんだ。
だからこそ、手紙は全ての記憶を取り戻した後じゃないと渡せないんだ。
と、考えている間に陽菜は目を覚ました。
「蓮、私いつの間に保健室に?」
「陽菜、大丈夫か?
いきなり倒れるから、驚いたんだぞ!
どこか痛いところはないか?」
「うん。大丈夫だよ。迷惑かけてごめんね...!」
「これくらいどうって事ないぜ!」
と親指を立ててGoodをした。
そして。
「「プハハッ、ハハッ。」」
と、俺たちはおかしくて吹き出して笑った。
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