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第4章 手紙 〜解放〜
ー数日後、陽菜が学校を休学した。
原因は、体調がなかなか良くならないらしい...。
でも、俺は他に何かわけがある気がする。
心当たりを知ってる人に聞くとしよう。
「香織、陽菜はどうしたんだ?」
香織は、悲しそうな顔で俺を見た。
「れっ、蓮。陽菜がね、昨日電話かけてきてそしたら、いきなり記憶がどうたらって...。
ずっとブツブツ何か言ってたし...。
⋯大丈夫なのかな陽菜。」
記憶!
まさか、戻ったのか?
「そうか。大丈夫だ...陽菜は。」
陽菜、やっとなのか?
とりあえず、後で家に行ってみる事にしようか。
˚✩∗*゚⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩˚✩∗*゚⋆。˚✩⋆。˚✩
放課後になった。
早速、陽菜の家に向かうことにする。
陽菜、待ってろ。今、行くから。
俺は全力で陽菜の家へと走った。
数分後にドアの前に着いた。
そして...。
ピーンポン
俺は、インターホンを押して待った。
すると、陽菜が疲れ切った顔で出てきた。
「あ、蓮。やっと来てくれた。中入ってよ。」
「大丈夫なのか?」
「うん。まぁ。」
やっぱり、司の事を...思い出したんだな…。
階段を上がり、俺たちは部屋に入った。
「ねぇ、蓮。私ね、記憶がずっと無かったの。
でも、この間、散歩のついでにあの公園へ行ったら...。
大好きな蓮の笑顔を思い出して...。
その優しい笑顔が誰かと似ていることに気づいたの。」
「それって....。」
「そうだよ。司君だったの。」
「そうだったのか...。」
「司君の事さ、蓮知ってたよね。なんで、教えてくれなかったの...?」
「それは、どうしても陽菜自身の力で思い出してもらいたかったんだ。・・・ごめん。」
俺には、これしか言う事が出来ない。本当に申し訳無かったと思っている。
「怒ってたって意味ないし...。
まぁ、いいや。それより、司君は...?」
「そっ、それは...。」
「もしかして、私の記憶通りこの世には....。
もう居ないの...?」
「・・・うん。」
「うっ....うわぁぁん。司、司君...。」
陽菜は、俺に抱きついて泣きついた。ずっと、泣き続けていた。
俺も辛くなって、閉じ込めていた思いをやっと解放した。
陽菜の記憶が解放されたみたいに...。
数時間後、泣き疲れた陽菜は俺の腕の中で寝ていた。どこか愛おしそうで、そして寂しそうな顔で...。
俺も、陽菜の隣で眠った。
˚✩∗*゚⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩˚✩∗*゚⋆。˚✩⋆。˚✩
ー夜中、俺らは目を覚ました。
もう、時計の針は、21時を回っている。風に当たるついでに2人で、公園へと向かう。
そして、ベンチに腰掛けると陽菜が...。
「この場所さ、私と司の大切な場所だったんだー。」
「うん...。」
「いつもここで、砂遊びをしたり、2人でお弁当交換したり...楽しかったのに。」
「そうだったんだ...。」
やっぱり、そうだよな。陽菜の心は司との思い出で溢れてる...。
「また、会いたいなぁ...。
司、会いたい。」
あっ、渡すものがあったんだ...。
「あのさ、陽菜。俺、司に渡すように頼まれてた手紙があるんだけど...。」
そう言って、俺はバックの中から白い便箋を取り出した。そして、陽菜の目の前に差し出した。
「ずっと、持っててくれたんだね。ありがとう。」
陽菜は、受け取ると中の手紙を読み出した。
「陽菜へ
この手紙を読んでいる頃、君は記憶を取り戻し、僕は既にこの世にはいないと思う。
でも、僕はどうしても伝えたいことがあって手紙を書くことにしたんだ。
僕は、陽菜の事が大好きだったよ。
あの日、出会ってからずっと僕の1番大切な人だった。
無邪気に笑う姿や照れている姿、どれも可愛くて愛おしかったんだ。
だからこそ、病気で弱ったこんな姿を君には見せたくなかった。
無理に蓮にお願いをして、このことを秘密にするって約束したんだ。
今まで隠してて、ごめんね...。
最後に...。
約束する。絶対に君のことを忘れない。
ずっと...。
陽菜の心の中で生き続けるよ。何年経ったとしても。
だから、元気で過ごして。
それが僕の願いだから。
ーさよなら、また逢う日まで
司より」
読み終わって、封筒に戻すと陽菜は嬉しそうに頬を赤く染めて空を眺めていた。
しばらくして、陽菜は何かを確信したように俺を見て言った。
「きっと、また会えるよ。司に。」
「そうだな。絶対会えるよ!」
そうして、俺たちは微笑みあった。
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