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「ふふふ。ゆーご!聞いちゃったぞ〜」
相変わらずニヤニヤしているこいつは中井膳だ。こいつは人の恋愛事情を聞いたら『応援』と称していじっている。
「はぁ。今度はなに?」
ほぼ毎日のように面白い恋愛事情を聞き出そうとしてくる。けど、俺は絶対教えない。
「優吾、本当は悠依のこと、好きなんだろ〜!」
カアッ。
顔が赤くなるのを感じた。
一年前のことを思い出した。
考えるだけで涙があふれてきそうだ。
ーーー忘れよう。
そう思っても、思っても…。
忘れられない。
だって…。
もうあの時のように楽しく話せないのだから。
僕は知らぬ間に泣いていた。
「おいーーー。優吾ーーー、変なこと言ってごめんな。まだーーー。あの事を気にしてるだろ。でもーーー。まだ悲しむなら、忘れたほうがいい。なんてったって悠依は、今、病院なんだから」
あの人はーーー。病気になってしまった。
もう会えないかもしれないと思った。
「けど、もうすぐ悠依、退院できるってよ。優吾、まだ忘れられないのなら、そこまで待ってろ。」
そんな言葉を残して休憩は終わった。
「2対2の二面のクロス!」
部長の声が響いた。
キーンキーン
無駄に頭の中に響いた。
俺は立てそうにもなかった。
今、部活はできない。
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