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「あー、暇だわぁ」
中井は唸っていた。だけど僕はそうは行かない。
逆に忙しい。
「新作ゲームの話しない?」
中井は大司に提案をした。
でも奈緒ちゃんはきっとその話についていけない。
話題を逸らさないと。
「ね、ねぇ大司帰り道一緒だし一緒に帰らない…?」
意外にも奈緒ちゃんが話題を逸らした。
きっと必死なのだろう。ふたりが一緒に帰れるのは僕にとって微笑ましいことだ。
その時、気のせいだろうか、横田亜衣がこちらを睨んだ気がした。
目に光は無かった。
まるで夜の曇りの空のようだった。
どうしたのだろう。
「あー、いーよー。小学校の頃、下校班一緒だったもんね」
「それでさー、5年生の時ーー」
ふたりの思い出話がはじまった。ふたつの小学校が集まったこの学校では、あきらかに大司たちの小学校の人の方が少ないが、この班では中井以外みんな同小だ。
「あー、覚えてるわ、楽しかったよなーあれは。なぁ、今日自転車押して帰らないか?」
優吾は頭の回転が恐ろしく早い。
自転車→早い→早く別れる
自転車押す→遅い→長く一緒に居られる!
優吾は目が輝いた。サングラスをつけても眩しいような、瞳だった。
「いいよ!」
奈緒はとびきり嬉しそうだった。
太陽より眩しい笑顔だった。
「あ、あの、昔みたいに帰りたいなーって」
この時、大司の顔は赤色のペンキだった。
「た、大司…?顔赤いよ。大丈夫?氷もってこようか?」
「いや、一時的なものだから…」
「?」
奈緒は分かっていなかったが、僕には分かる。
つまり、照れてるのだ。
大司は。
脈ありか?
わくわくする気持ちを抑えていたら、中井が声をかけてきた。
「な、なぁ優吾。あのふたりって付き合ってるのか?」
「んー分かんない」
僕はとびきりのおとぼけ顔を見せた。
「くっそー!リア充かー!非リアの俺が泣くじゃ無いかー!」
中井は頭に来る高い声でさけんでいた。
(僕だって非リアだし)
と中井に言いたかった。
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