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「お前はろくでなしでクソッタレの才能がありそうだ。クズの生き方をたっぷり学びな」
「うん」
「呼び名が必要だから今この場でつけてやる」
彼は僕を引っ張ると肩に担いだ。そして仲間たちが縄梯子を引っ張り上げて僕たちは看板にたどり着く。
「ハーヴェストムーンじゃなきゃ、ここまで月明かりは強くなかった。それにあやかってお前は今日からハーヴェストだ。vとbの発音間違えんなよ。ハーヴェスト、な。」
「どういう意味?」
「収穫、命を刈り取ることだ。お前は刈(狩)り取れ、金も名誉も、なにもかも」
それが人だ。そんなことを男たちは笑いながら語る。
僕は満月の夜に、人間として終わりを迎えようとしていた。でも今日から人として生きていくことになる。誰かを不幸にして、悲しませて。もしこの世に神様がいるとしたら、きっと今悲しんでいる。僕が愚かな選択をしたことを嘆いているかもしれない。
冗談じゃない、さっき僕が死にかけた時助けてくれなかったじゃないか。毎日ひどい目にあっても何もしなかった。そんな奴の嘆きのために、僕は人間になるつもりはない。
僕は、自由になったんだから。
僕は、自分の力で生き抜いた。
この広い大海原の中で、船が通るなんて絶望的な状況で。もっとも月の明かりが強くなるハーヴェストムーンに救われた。これを奇跡と言わずになんだ? 僕は満月の不思議な力に救われたんだ。だったら、その奇跡を誇ろうじゃないか。
どんなものでも、刈り取ってみせるさ。金も名誉も尊厳も、命さえ。
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