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1話
現在俺は、全力疾走中だ。
なんでって?それはこっちが聞きたい。
始まりは、霊留の「学校まで競走しよーぜ」という誘いを断ったこと。
それだけだったのに、霊留が俺の手を引いて走り出したことで今に至る。
俺、1ミリも悪くないよな!?
「...ッはぁ、ゔ~...」
俺が息を切らしてる隣で、霊留は涼しい顔をして雲ひとつない空を見上げていた。
「なんで...そんな、早いん...だよ~、俺...毎朝!運動、してる...のに!」
運動が好きで、日常的に外にでる俺に対して霊留はインドア派。
それなのに、昔から霊留のほうが運動神経がいい。
俺だって運動は得意な方だ。ただ、霊留が常人の域を超えているのだ。
「分けてあげたいよ」
「くれ」
「無理」
相変わらず塩対応な霊留に少し笑った。
「あ……!!」
「なんだよ、デカい声出して」
霊留が心底迷惑そうに俺を見てきた。
俺は大事なことを思い出したのだ。
「下駄箱行こ!手紙入ってるかも!!」
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。
「ん~入ってないなぁ」
隅々まで確認したが、俺の下駄箱には今日もラブレターは入っていなかった。
小学生の妹が読んでいた少女漫画には、ラブレターを下駄箱に入れて告白するシーンがあった。
だから俺にも起こるんじゃないかって期待してんだけどなぁ。
なんて思っていると、ばさささ、という音がとなりから。
チラリと目を向けると.....
「なんでお前のには入ってんだッ...」
神様って不平等だな、なんて思っていると霊留が俺の手の上に手紙の半分を乗せた。
「そういうことじゃねぇッ!w」
俺は、笑いながらも、なんだかんだ霊留は優しいなぁ、なんて思った。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。
朝のHRが終わり、またもや全力疾走の俺。
教科書を忘れたため、霊留に借りようと思ったのだ。
勉強が得意とは言えない俺は、授業を真面目に受けないと補習の危機なのだ。
大好きな部活の時間を補習にされたら困る。
ここまで追い込まれたのは、最近授業をサボりまくったせいなのだが。
つまりは、自業自得というやつだ。
「霊留~ッ!!!」
霊留の名前を呼びながら、彼のクラスの扉を勢いよく開けた。
俺の視界に入ったのは霊留の周りに散らばった教科書たち。
なんとなく、嫌な雰囲気を感じた。
霊留の教科書を拾い集めるのを手伝った後、ふたりで教室を出た。
「サボろーぜ」
予定変更。俺の思い過ごしかもしれないが、なんだか霊留をここに置いていくのはよくない気がした。
「もちろん」
霊留の返事を聞いて、屋上に向かってふたりで歩き出した。
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