路傍の石

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 その言葉にギョッとして、蔵は大急ぎで身を翻した。 「こっちだ」  蔵は導かれるままに、その場から退出したのであった。    ◇  理不尽な目に遭っても一応我慢しようとはするが、元々が喧嘩っ早い性格でカッとするとついつい反撃してしまう。  その所為でどこのバイトも続かず、とうとう所持金二千円という有様まで落ちぶれてしまった。  取り敢えず顔と腕っぷしは良いので、上手い事いけば女の所へ転がり込んで塒を確保する事も出来るのだが、それもここ最近は失敗続きだ。  今の大石蔵は、その日暮らしの根無し草だ。  で、そんな状態であるワケだが―― 「……ここ、本当に人が住んでるのか?」  底辺の、更に底辺が住み着くような、超おんぼろアパートまで付いて行った蔵は思わずそう呟いていた。  そんな蔵に、男は冷たい一瞥をくれる。 「現に、オレは住んでる」 「そ、そうか……如何にも家賃が安そうで、良い物件だな」  そう言いながら、男の後に続いてアパートの階段を上がろうとするが。 「――あんた、いつまで付いて来る気だ」 「え?」 「オレは招待してない」 「まぁ、そう言うなよ~」  と、蔵は出来るだけ人好きする笑顔を作ってデへへっと笑う。  その脳内では、様々な事を考えていた。 (所持金が二千円しかないのに、ネトカフェは勿体ないっつーの。飛び込みのバイトにしても、足代も飯代も無いと無理だし。そもそも携帯料金も、このままだと今月分も払えないんだ。何とかこいつのヤサに居座って、ある程度は節約しないと)
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