二章〜黄金の刃

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その日の夜中、夏織はシャワーを浴びてシックなパジャマを着て自分の部屋のベッドに座り、ぼうっとしていた。 時間は23時、そろそろ眠らなければならない時間だが当然眠れるわけはない。 洗濯を終えた学校のYシャツを部屋に干してあるが襟の一部に父親の血が付着している。 しっかりと洗濯したのでさほど目立つわけではないがやはり気分は良くない。 夏織は突然すくっと立ち上がり、パジャマのボタンを全て外し、上半身裸になった。 そして部屋にある自分の全身が映るくらい大きい姿見鏡の前に立った。 シューシュー… 今まで聞いたことがない小さな音が部屋に響いている。 そして夏織はその音の正体を鏡越しに見た。 「何なのよ…これ…。」 天突から縦に20cm程度、横に15cm程度が黄金に輝き、シューシューと音を立てて渦巻いていた。 「ハァハァ…何…コレ…。」 夏織は恐怖で息が荒くなってきた。 その時、自分の足元に何かが落ちるの感じた。 夏織はそれを確認しようと膝を折り、しゃがもうとした時、自分の顔の異変が鏡に映った。 「イヤ…な、何…?いやっ…いや…いや…」 自分の両目から血涙が流れている。 それが床に垂れていたのだ。 「いやぁああああああ!!!!」 夏織は首元の異変と、自分の顔の異変に恐れ慄き、しゃがもうとした姿勢のまま大きな悲鳴を上げたその時である。 バリンッ!!バキィッ!! 夏織の首元の異変から、10cm角で長さ1m程の棒状で黄金に輝く物体が前方目がけて飛び出て姿見鏡を貫いた。 貫いたそのコンマ数秒後には姿見鏡は粉々になり、粉末ようになったかと思うとその黄金の棒に全て吸い込まれてしまった。 黄金の棒はシューと音を立てて、夏織の首元の異変に収納された。 「夏織!どうしたの!!夏織!!」 母親が夏織の悲鳴と姿見鏡が破壊される音を聞き、部屋の前までやって来た。 「入んないで!!お母さん!!大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫!!絶対心配かけないから!!大丈夫だから!!」 夏織は膝を着いて、息も絶え絶えに叫んだ。 「そ…う…分かった…。」 母親の足音が遠ざかるのを確認した夏織は、自分の両肩を抱いた。 「ハァハァ…いや…何…?今日は本当に何なのよ…。」 夏織は両肩を抱いたままがたがたと震え始めた。 「あたしは何かを楽しんだら駄目なんだ…。楽しんだらそれに対して辛い思いをしなきゃきけないんだ…。そうなんだよきっと…。だからこんな体になった…。フフ…フフフ…。」 夏織は流れる血涙を手の甲で拭った。 そして嗚咽の中で呟いた。 「フフ…う…今日は…た、楽しかったな…」
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