二章〜黄金の刃

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「待って!大丈夫!夏織、私は絶対にあなたの味方。大丈夫よ。大丈夫、さぁこっちを…こっちを向いて…?ね?」 母親の優しい言葉に、夏織は落ち着きを取り戻してきた。 「ハァハァ…あたし…もう…心配かけたくないよ…」 「大丈夫…。さぁ夏織、こっちを向いて。これから話すことをよく聞いて。ね?」 「ハァハァ…うん…」 夏織はこくりと頷いた。 「夏織、あなたの体から…首から出てきたもの…その力はエンジェル・ストライクっていうの。」 「エンジェル…ストライク…」 夏織は意味が分からないといった反応をした。 「そう、それはね?凄い力なの。」 「凄い力…」 「それはそれはとんでもない力なの。ただ、それを…その力を持っていることが周りに知られたら大変な事になる。それは分かるよね?」 「ちょっと待って…?分かんないよ…。」 夏織は半笑いで、首を横に振った。 すると母親は夏織のパジャマの襟元を両手で掴むと力を込めた。 そして勢いよくボタンを引きちぎり、夏織の胸を開けさせた。 「ちょ!お母さん!」 母親は騒ごうとする夏織の両膝に再び両手を乗せた。 夏織はそのまま固まってしまった。 「綺麗ね、夏織。こんなに華奢で…こんなに綺麗な娘に…何でエンジェル・ストライクが…。うぅ…。いい!?夏織!!」 母親は急に大声で夏織の名を呼んだ。 「な、何よ…。」 「絶対にこの力のことを誰かに言っては駄目!!」 母親は目をこれでもかとばかりに見開き、夏織に言った。 「誰にも…?」 「そうっ!!誰にも!!」 「お父さんにも…?」 「お父さんは知ってる!だからいい!私とお父さん以外には絶対に言っては駄目!!見せても駄目!!分かった!?」 「…わ、分かった…。」 「本当に分かったわね…私の娘…夏織…」 「分かった…約束する…。」 「そして、エンジェル・ストライクという言葉も忘れて…。いいわね?」 「分かった…。」 母親は一度頷くと、夏織を抱き締めた。 「他の約束はいいの…あなたも高校生だもの…お父さんはどうだか分かんないけど…私は帰る時間の約束を破るくらいなんてことないわ…?でも…でも…この約束だけは守って…。」 夏織は耳元でそう言う母親に素朴な疑問をぶつけた。 「お母さん、約束は守るけど一つだけ教えて。エンジェルストライク…?のことを皆んなに言うとあたしはどうなるの…?」 「知らなくていい…知らなくていいよ…。あなたは約束を守るのだから…」 母親の言葉を聞いた夏織は母親を抱き締め返した。 「遅刻しちゃうよ、お母さん…。」 夏織は抱き締めた母親の背中を優しく叩いた。
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