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「待って!大丈夫!夏織、私は絶対にあなたの味方。大丈夫よ。大丈夫、さぁこっちを…こっちを向いて…?ね?」
母親の優しい言葉に、夏織は落ち着きを取り戻してきた。
「ハァハァ…あたし…もう…心配かけたくないよ…」
「大丈夫…。さぁ夏織、こっちを向いて。これから話すことをよく聞いて。ね?」
「ハァハァ…うん…」
夏織はこくりと頷いた。
「夏織、あなたの体から…首から出てきたもの…その力はエンジェル・ストライクっていうの。」
「エンジェル…ストライク…」
夏織は意味が分からないといった反応をした。
「そう、それはね?凄い力なの。」
「凄い力…」
「それはそれはとんでもない力なの。ただ、それを…その力を持っていることが周りに知られたら大変な事になる。それは分かるよね?」
「ちょっと待って…?分かんないよ…。」
夏織は半笑いで、首を横に振った。
すると母親は夏織のパジャマの襟元を両手で掴むと力を込めた。
そして勢いよくボタンを引きちぎり、夏織の胸を開けさせた。
「ちょ!お母さん!」
母親は騒ごうとする夏織の両膝に再び両手を乗せた。
夏織はそのまま固まってしまった。
「綺麗ね、夏織。こんなに華奢で…こんなに綺麗な娘に…何でエンジェル・ストライクが…。うぅ…。いい!?夏織!!」
母親は急に大声で夏織の名を呼んだ。
「な、何よ…。」
「絶対にこの力のことを誰かに言っては駄目!!」
母親は目をこれでもかとばかりに見開き、夏織に言った。
「誰にも…?」
「そうっ!!誰にも!!」
「お父さんにも…?」
「お父さんは知ってる!だからいい!私とお父さん以外には絶対に言っては駄目!!見せても駄目!!分かった!?」
「…わ、分かった…。」
「本当に分かったわね…私の娘…夏織…」
「分かった…約束する…。」
「そして、エンジェル・ストライクという言葉も忘れて…。いいわね?」
「分かった…。」
母親は一度頷くと、夏織を抱き締めた。
「他の約束はいいの…あなたも高校生だもの…お父さんはどうだか分かんないけど…私は帰る時間の約束を破るくらいなんてことないわ…?でも…でも…この約束だけは守って…。」
夏織は耳元でそう言う母親に素朴な疑問をぶつけた。
「お母さん、約束は守るけど一つだけ教えて。エンジェルストライク…?のことを皆んなに言うとあたしはどうなるの…?」
「知らなくていい…知らなくていいよ…。あなたは約束を守るのだから…」
母親の言葉を聞いた夏織は母親を抱き締め返した。
「遅刻しちゃうよ、お母さん…。」
夏織は抱き締めた母親の背中を優しく叩いた。
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