三章〜それでも私は

2/2
前へ
/22ページ
次へ
紗耶虎は夏織の顔を見直した。 教室の窓は開いていないが、二人の間にカマイタチのような鋭い風が通った。 「夏織…。」 「ん?どうしたの?」 紗耶虎は夏織の右頬を撫でた。 夏織のきめ細かいその肌の感触が伝わってくる。 「んっ…。」 夏織は顔を少し背け、少し身をよじらせた。 そして下を向いて顔を赤らめた。 「可愛いね、夏織。なんか夏織って本当に妹ちゃんみたいね。うん、そうね、夏織。私が居るから。」 「うん、そう!紗耶虎が居るから。お姉ちゃんかぁ~。そう言われてみれば確かにお姉ちゃんっぽいね。頼りにしてるよ?紗耶虎お姉ちゃん。」 夏織はパァと紗耶虎に笑いかけた。 『ささやかな抵抗をしてみようと思う。これが幸せというならば、幸せの為に抵抗するのは悪ではないはず。蓄積してそれを昇華させるのが役目ならば、抵抗は一つの手段に過ぎないはず。天使の攻撃など誰が何の為に…天使なんかじゃない。天使はその剣を振らない。』 『辛く悲しい思いなど誰もしたくない。誰かのせいにしてしまうのが一番楽で、誰かを悪者にするのが一番その場しのぎの問題を解決に向かわせるのは分かってる。それが全て結果どこかでしわ寄せがきて、連動して…結局誰かがそれを受け取らなければならない。天使は結局、天の使い、天の指示にのみ従うだけ。天が言えば町を焼き、人を消す。それが分かったものこそ、エンジェル・ストライクなんだろう。』 「お姉ちゃんは怖いよォ?夏織。言う事聞かないと怒っちゃうよォ?」 「アハハ!大丈夫!仕返ししちゃうから!うん、怖くても大丈夫。ね、紗耶虎こそ、あたしはわがままだよ?困らせてやるから。アハハ!」 夏織は明るく笑った。 紗耶虎も明るく笑い返した。 「ハハハ!夏織、それでも私は…」 「ウフフ!アハハハハハ!!」 紗耶虎は大笑いする夏織に向かい、小声で続きを言った。 三章 「それでも私は」〜完〜 最終章 「神告」へ続く
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加