最終章〜神告

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「私が言いたい事は、夏織にそうなってほしくないってこと。巨大な力をコントロールできた人間は歴史上…いたかもしれないけど最終的には必ず悲劇的な結末を迎える。私は夏織がそうなるなんて耐えられない。いい?人間は巨大な力なんてコントロールできないわ。」 「紗耶虎、あたしがそうなるとでも思ってんの?」 夏織はわざとらしくむくれてみせた。 「思っていない。だけどそうなる可能性はある。夏織であっても可能性だけは必ずある。だから約束してほしいな。絶対そうならない為にもそうなる可能性を秘めたものには近付かないでほしい。巨大な力ってそれだけで色々良くないものを引き寄せてしまうものだから…。」 「お待たせしました、チーズインハンバーグとパンのセットです。」 中年女性の店員が夏織が注文したものを運んできた。 「あ、はぁい。あたしです。どうも。」 夏織が紗耶虎の右の手のひらをするりと抜けて右手を上げた。 「あ…。」 紗耶虎は悲しそうに眉間にしわを寄せた。 「ん、紗耶虎のも来たよ?あ、美味しそう。紗耶虎のパスタも美味しそうだな。」 「はぁい、お待たせしましたぁ。鮭とほうれん草のクリームパスタです。」 紗耶虎の注文したものを今度は若い女性店員が運んできた。 「ど、どうも…。」 「食べよ?紗耶虎。」 「う、うん。夏織、さっきの私の思いは…伝えたい事は伝わったかな。」 「もちろん、伝わった。分かったよ。」 「そっか、良かった。食べようか。いただきます。」 紗耶虎はほっとして、肩の緊張を解いた。 そしてパスタをフォークに巻き付け始めた。 「うん、いただきます。ところでさ…紗耶虎。」 夏織はハンバーグをナイフで切りながら紗耶虎に問いかけた。 「なぁに?」 紗耶虎はフォークに巻いたパスタを一口食べた。 「紗耶虎は巨大な力って言ったけど、そんな巨大な力なの?あたしの力って。」 紗耶虎の動きが止まった。 夏織は堰を切ったように話し始めた。 「ね、紗耶虎。あたしの力はそんなに巨大じゃないと思うの。姿見を消しちゃうくらいなものじゃない?そんな巨大な力なの?」 「それは…夏織のお母さんが凄い力だって…そう言っていたのを聞いたから…」 「凄い力かもしれないけどそんな巨大なものだとは誰も言ってないよ?」 紗耶虎の時間が停止した。 夏織は切ったハンバーグを口に入れた。 大き目に切ったハンバーグを咀嚼してゴクリと音を立てて飲み込むと再び、ハンバーグを切りながら止まっている紗耶虎の時間を動かし始めた。 「ねぇ、紗耶虎。それともあたしのこの力はゆくゆくはそんな巨大なものになるって事?それで?だとすると何でそれを紗耶虎が知っているの?」
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