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紗耶虎は夏織を鋭い目つきで見つめた。
睨むという行為とは違い、憎悪や嫌悪感は感じない。
ただ物理的な見方で鋭いというだけだ。
「紗耶虎、何か知ってるの?もし知ってるのであれば…秘密を明かした私に知ってるものを明かさないのは卑怯だと思うけど?」
紗耶虎を淡々と問い詰めていく様は、いつも紗耶虎に甘えている夏織とは明らかに違う。
「夏織…。フフ…何か怒ってるの?」
「いや、怒ってなんかないよ?ただ、秘密を共有している仲かもしれないけど秘密を差し出してるのはあたしだけ。それって何かおかしい気がして…。」
「そっか…それもそうだよね。」
「うん…何か気悪くしちゃってたらごめんなさい…。ただ紗耶虎とはそんな中途半端な仲は嫌だなって…。」
「夏織、ごめんね。私が悪かった。とりあえず食べよ?冷めない内にさ。」
「うん…いや、いいよ。うん。とりあえず食べよっか。」
二人は食事を再開した。
「私はこの学校入って、夏織と友達になれて良かったよ。」
「あたしもォ。紗耶虎がいっつも一緒で良かったよ。ま、これからも…だけどね。」
「そうだね。これからもだよね。」
二人の食事はおよそ一時間ほどで終わった。
食事の間二人の会話は、二人の出会いを懐かしむような内容ばかりだった。
何をも疑っていない夏織の笑顔と、それを見て顔を僅かにしかめる紗耶虎はファミリーレストランでの会計を済ませると、近くの海岸へ向かい歩いた。
ファミリーレストランから五分ほど歩いたところにかなり広い面積を誇る海岸がある。
その海岸の砂浜に着き、夏織が叫んだ。
「うわぁい!!見て!紗耶虎!!今日めっちゃ海綺麗だよ!!」
「本当だ!!今日は青いね!!真っ青だ!」
「そういえばさ、今日はおさぼりのサラリーマンもいないね。」
夏織はきょとんとした顔で紗耶虎に言った。
やや強い海風が夏織のトレードマークであるエルフ風のヘアスタイルを少し乱して通過していく。
「時間が時間だからね。ふぅ…なんか疲れたな。少し、よいしょっと。座ろうよ夏織。ほら、隣においで。」
紗耶虎は砂浜に打ち上げられた長尺の瓦礫に腰を下ろし、隣をポンポンと叩いて夏織を呼んだ。
それを見た夏織は嬉しそうにして、跳ねるように歩いて来て紗耶虎の隣に座った。
「夏織…。」
「なぁに?」
「教えてあげる、全部ね。」
「何を…?」
紗耶虎は夏織の言葉に残念そうな笑みを浮かべた。
「エンジェル・ストライクってこういう事なの。」
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