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「アグッ…グェエエエ…ガガガ…」
紗耶虎は座ったまま白目を剥いて、激しく痙攣し始めた。
「紗耶虎…そうなんだ…悲しいな…何でだろう…。なんか悲しいな…」
夏織は涙を流した。
この現実は夏織にとって悲しいことではないはずだ。
「同じ苦しみと悩みを分かち合えると期待するはずなのに何でこんなに悲しいんだろう。ねぇ…何でだろうね…。」
夏織の中に恐怖は無い。
だが悲しみだけが加速していく。
「ヒッ!ヒグッ!!ウグッ!!」
紗耶虎は白目を剥いたまま涎を垂らし、激しく体を震わせながら立ち上がった。
「ガガガ…ガ…オ゛ルルル…」
紗耶虎が遂に血涙を流し始めた。
「紗耶虎、大好きだよ。あなたが何者でも…ね…。」
「イ…イ゛ガァ!!??ガァオルゥ!!コレガ!エンジェルストライクダァァオエエエ!!」
「え…?何…?」
紗耶虎の腹部が大きく膨れて、制服であるYシャツのボタンが全て弾け飛んだ。
紗耶虎のブラジャーの下からへそのラインまで真っ黒くなり、そこが円形にぐるぐると渦巻いている。
「アアアァァァァァァ!!!!」
紗耶虎の絶叫が辺りに響いた。
すると紗耶虎の真っ黒い腹部の渦からズルリと金色に輝く鹿の角のようなものが出てきた。
そしてそれは漫画の吹き出しのように一気に紗耶虎の腹部から出て、巨大化し、全長100m近く、全高60m近くの光り輝く鹿が現れた。
現れたその衝撃により、辺りに風が発生し、夏織と紗耶虎の衣服をばたつかせた。
その光り輝く巨大な鹿は体の模様を始め、顔、角、足その全てが雄鹿そのものだ。
その雄鹿は建造物のように大きく、ライトアップしているかのように全体が金色に輝いている。
「キッシシシシッシシシシキッシシシシ…」
紗耶虎はその黄金の大鹿の後ろ足の近くで、カクカクと関節部品が錆びついた人形のように動き、奇妙な声を上げた。
「紗耶虎!!」
「キシシシシィ!夏織ぅ!!!!私が!!私が守護師の一人!!御浦紗耶虎だぁああああああ!!!!夏織ぅあああ!!その剣を抜けぇえぇえぇ!!」
「守護師…?御浦…紗耶虎…?剣を抜け…?」
紗耶虎が叫び終わると、黄金の大鹿は跳ね馬のような格好になり、その目を夏織に合わせた。
よく見えないが、夏織は大鹿と目が合ったような気がした。
大鹿はあまりにも巨大過ぎて正確には分からないが夏織は目が合った気がしたのだ。
夏織はそれを見て、全てを理解した。
「そんな…そんなぁ…あたしを殺そうとしてんの…?いや…あ…あぁ…アアアアア〜!!ヒィィ!!アッアッ!アアアアアアア!」
夏織は両手で首を押さえて、苦しそうに叫んだ。
夏織はあまりの苦しみに膝を地に着けて、さらに大きな叫び声を上げた。
「グェエエエ!!ガッ!!ガ…!!あぁ!!」
すると夏織は目から血涙を流し始め、エンジェル・ストライクが発動した。
夏織はYシャツの上二つのボタンを外し、両手ではだけるとそこには黄金の渦が出来上がっていた。
「紗耶虎!紗耶虎ォ!!あたしはまだ死ぬわけにはいかないの!!!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だァァァ!!!!」
前回は10cm角で長さ1m程の棒状の黄金に輝く物体が胸元の異変から突出したが、今回、夏織の叫びと共に現れたものは断面積は変わらないが長さは10mはある長い棒状の物体がズドンという音と共に胸元の異変から突出した。
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