二章〜黄金の刃

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二章〜黄金の刃

御城家の月曜日の夜七時、家の中は怒号に包まれていた。 御城家のダイニングから父親のとてつもなく大きい声が聞こえてくる。 「夏織!今何時だ!!お前の口から言ってみろ!!」 「約束は守れないこともあるでしょ。でも連絡一つ寄こさないのはどう考えても悪意があるよね…。夏織、説明して。」 「待ってよ…二人ともおかしいよォ…なんでそんな…酷いよ…」 両親から帰りが遅いことを咎められていた夏織は涙ぐんでいた。 夏織は自身の存在価値を低く見積もっていた為、両親に強く言い返せずにいた。 夏織が泣き始めると両親が言い争いを始めた。 「まず、俺の質問に答えろ。」 「お父さんは強く言い過ぎ。夏織の事を思うなら理由をしっかり聞くべきだと思うわ…。」 「今はそんな事を言っている場合じゃない!お前はいつも順序が逆なんだ!」 「お父さんは黙ってて。お父さんがそれを知って何になるの?」 「お前が主導でこの手の話をしていて今まできちんとまとまった事があるか!?一度も無い!大体夏織の話をしているのに夏織の前で俺にケチを付ける馬鹿がどこにいる!!お前の方が俺より優れているのは十分分かってる!!お前は凄い!頭が良い!それは理解している!だから夏織の前で俺の指導にわざわざケチ付けなくても夏織も分かってる!!大丈夫だ!!大丈夫なんだよ!!夏織の前でカッコつけなくてもお前の方が人間として優れているのは夏織も俺も分かってる!!だからせめて俺が指導している時くらい黙って聞いてろ!!後から夏織にフォローすればよりお前はいい人間に見られるだろう。俺がわざわざ悪役をしてやってんだ!!それをいい事に夏織の前で調子に乗ってんじゃない!!!」 夏織の父親が母親に畳み掛ける声が途切れると、静寂が訪れた。 ダイニングでは夏織が食事をしているいつもの席に座り、その向かいに小柄な母親が座っていて、その隣には大柄な父親が仁王立ちで二人を見下ろしていた。 頭髪は薄くなり始めた感じの真ん中分けで黒髪、顔つきは夏織に少しだが似ている。 しかし夏織よりもきつい感じでかなり険のある美形だ。 でっぷりと太っているわけではないが全体的に骨太で太く見える。 そんな父親が女性二人を見下ろして、怒鳴り散らしているのだ。 夏織も口うるさいが、基本的には優しい父親が激怒している様を見て完全に萎縮してしまっている。 母親も自分に対して凄まじい怒りをぶちまける自分の夫に完全に萎縮してしまって居るようだった。 そのまま重苦しい時間が過ぎて、約1分後、母親が泣きそうな声で切り出し始めた。
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