受験生とタイマーさん

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 タイマーがぴぴぴと鳴る。スマホに映し出された停止のボタンを押す。  しかし私の頭はまだ「勉強をしたい」という欲望であふれていた。シャーペンを持つ手が、ページをめくる手が止まらない。 「おやおや、(つむぎ)さん。お休みの時間では?」  男性の声にハッとなる。 「でも、ここまでだから! やっちゃいたいの」  そう答えると、後ろでため息が聞こえた。すらすらとノートを走る私の右手に、彼の右手が重なる。その手は大きく、白い手袋をしていた。布の感触が冷たい。ぴたり、手が止まる。 「休憩は大事ですよ。キリが悪い方があとからやりたくなりますし、まずは休みましょう」 「でも……」 「あと一時間やりたいでしょう?」 「それは……」  念押しするように「ね?」と優しい声が降ってくる。私はうなったのち、ペンを置いた。  振り返ると、そこにはタイマーさんがいた。懐中時計の頭をした男性だ。 「まずは水分補給をしましょう」  水筒から水を飲む。もう中身は半分以下だ。 「それから、椅子から立って、伸びをして」  タイマーさんの言うとおりに動く。体を動かすと幾分か疲労は軽減した。ヒートアップしていた頭が冷えてくる。 「よろしい」  上機嫌な声がした。私はストレッチをしながらタイマーさんの隣に立つ。 「ねぇ、タイマーさん」 「どうかしましたか、紬さん?」 「あのね。勉強の意味、あるのかなって」 「受験をするためでしょう?」 「そうなんだけどさ」  タイマーさんは「何かあったのですか?」と心配そうに聞いてくる。
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