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また、乃蒼は知覚に関して興味があり、わざわざうちの大学に編入してきたようだった。レポートや大学の図書館で出会った時に読んでいる本も大概、知覚それも特に視覚に関する文献だった。
「視覚情報も脳の解釈によるものだから、そこに取捨選択が入る。だから、見たと思った情報は事実ではなく、見たいと思った情報っていうことだよね」
僕は乃蒼との議論が心地よく感じたし、それは乃蒼も同じだったのではないかと思う。
「じゃぁ、見せる側の意思ってどうなるんだろうね。人は強く見せたかったり綺麗に見せたかったりするじゃん?そこはどうなるんだろう」
「美しく見せたいと思い、ある人は美しいと思う。そこに意思があり、受けてがそれを知覚するのなら、それは実在の証明となるでしょうか」
「いや、実在の証明とまではならないんじゃないかな。だって、幻覚でも美しいと思うことはあるだろうし」
「それでは、幻影の証明ですね」
そんなやりとりを、人気のない部室でかわしていた。
説明が遅れたが、なぜか乃蒼は映画サークルに入ったのだ。
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