タイマン戦 国語VS社会

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――鳴らされた。天を貫くファンファーレが。 彼らが与えられた特殊能力。それは『教科に沿った技を扱うことができる』能力である。 銀杏ならば国語に関する能力。 武蔵ならば社会に関する能力。 つまるところ、その教科の知識があればあるほど技のレパートリーが増え、相手に対して大きなアドバンテージを得られるのである。 先手を取ったのは銀杏。地面に手を置き、技名を詠唱した。 「――『画竜点睛(がりょうてんせい)』!!」 ――同時に現れるは2匹の龍。白い体毛に数十mにも及ぶ体躯。真っ赤な眼光が武蔵を補足し、大きな遠吠えと共に襲いかかった。 武蔵が手を前に出す。手から生える影は形を土偶のように移していた――。 「――『土偶(どぐう)』!!」 地面から出現する無数の土偶。小さいが数は多い。巨大な2匹の龍は無数の土偶たちによって行く手を阻まれた。 (これで終わらせられたら良かったんだが……そう簡単にはいかないか) (初手から高火力の技……それほど自信があるのか。どんな理由にしろ警戒しておかなければ) 僅か1秒にも満たない時間で思考する。まだ相手の出方が分からないなら、とりあえず攻撃を続ける。両者ともにそれが最善の手と考えた。 相手との距離は200m。出方を見るといっても、とにかく相手に近づくのが先決だ。相手が遠距離攻撃が得意な場合、このままだと一方的に嬲られてしまう。 そう考えた銀杏は指を鳴らした。――技の発動である。 「『スーホの白い馬』」 地面から飛び出てきたのは純白の馬。即座に飛び乗った銀杏。馬は合わせるようにして駆け出した。 「こっちに来るか。なら――『季節風(モンスーン)』」 凝縮された風の塊。透明で何も見えないビームのような風が何層にも重なり放たれた。 (また遠距離技か……近接は苦手なのか?) 走っている馬から飛び上がった。馬は青白い光となって消えていく。武蔵の攻撃が通過したのは、そのすぐ後であった。 (まだ断言できない。ある程度は様子見するか) 双方の距離はまだ100mほど。決して近くはない。だが完全な初見で予備知識のない2人は様子見するのが妥当と考えている。 いわばこれまでの攻撃はボクシングで言うジャブ。相手の出方を見るための攻撃。次の攻撃も銀杏にとってはそうだ。しかし――武蔵はここで強気に出る。 「『大造じいさんとガン』――」 ――武蔵は前へと出た。走り出したのだ。銀杏からしたら想定外も想定外。思わず思考が固まってしまう。 しかしそこは天才。すぐさま思考を切り替え、迎撃に攻撃を切り替えた。 (遠距離技だけじゃない。近づいてくるってことはそういうことだろ。なら乗ってやる) 拳に万力の力を。血管が浮く。黄色いエネルギーが銀杏の拳を覆った。 「――『握手』!!」 黒衣を纏っていたルロイ修道士のように。万力の力を込めた拳をもって武蔵を迎撃する。 対する武蔵。彼は――それを見越していたかのように。ニヤッと笑みを浮かべた。
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