タイマン戦 国語VS社会

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――2つの巨大な召喚獣がぶつかり合った。それは2度目の合図。同時に召喚者の2人も戦闘を再開する。 まずは離れる。強力そうな近距離技を見た以上、このまま得意距離の中距離戦で戦い続けるのが得策だ。 「『線状降水帯(せんじょうこうすいたい)』」 空気中の水分が武蔵の前に収縮する。圧縮された水の逃げ道は1点。細い細い穴から水は逃げようと勢いよく飛び出した。 まさしくそれは水のレーザー。ウォーターカッターと表現できる。水は狙いを銀杏に定めて発射された。 (また中距離技……さっきは誤魔化されたが、やはりコイツは近距離戦が苦手だな) 高速で向かってくる水のレーザーを避けつつ、銀杏は思考を巡らせる。 攻撃の反応。少ない時間ながらも相手の得意距離は理解した。そっちが近づく気がないのならば。こちらから近づくまでである。 体の表面がパチッと弾けた。青白い光が肌を駆け抜けていく。それは――雷。電気。稲妻である。 雷は全身を駆け巡る。神経をとんでもないスピードで移動する。その名の通り雷。人体。体の動きは雷に合わせるかの如く――加速した。 「『電光石火(でんこうせっか)』――」 纏った青白い雷。明らかな強化技。見た目からしてスピードが格段に上がっている。 (近づく気か――!!) 発射され続けている水を横薙ぎに払う。スピードは保たれたまま。ウォーターカッターのような切れ味は既存だ。 しかし横薙ぎのスピード事態はそう速くない。今の銀杏からしたら――。 ――刹那。瞬きをする間もなく銀杏が視界から消えた。 「えっ――」 さらに刹那。小次郎のアバラに強烈な衝撃が走った。熱い痛み。電撃のようだ。いや、正確には――。 ――銀杏の拳。電光石火で高速移動した銀杏の攻撃であった。 (は、速い!!想定以上に!!) 地面に叩きつけられながら思う。なお雷撃の閃光は止まらない。銀杏の猛攻は止まらない。 「『握手』――」 収束するエネルギー。先程は不発に終わった『握手』をもう一度放とうとする。 「グッ――『ロゼッタストーン』!!」 武蔵の前に現れるは『ヒエログリフ』『デモティク』『ギリシャ文字』で書かれた石版。銀杏の攻撃は石版を砕いた。 とんでもないパワー。しかし言えばそれまで。攻撃は武蔵に届かなかったのだ。 「『シュトゥルム=ウント=ドランク』」 ドイツ語で「疾風怒濤」つまり激しく荒れ狂うことを指す言葉。18世紀に存在した詩人ゲーテを中心とする文学改革運動。彼らの意思は武蔵によって風となり、今なお日本の地に突風を吹かせる。 交差する2つの風。クロスする強風。銀杏の体は風に押しつぶされた。 「グッ――」 追撃。怯んだ銀杏への攻撃。中距離の技は技名詠唱のため時間がほんの少しだけかかってしまう。ほんの少し。だが戦闘ではそんなごく短時間が命取り。 なので今回は直接攻撃だ。銀杏の腹部に蹴りを放つ。能力を与えられる際、ついでに強化された身体能力。 武蔵のパワーは銀杏を軽く数十m蹴り飛ばすほど強化されている。中学生がだ。相当の強化である。 しかし銀杏も相応の強化はされてあった。武蔵の蹴りを喰らっても体勢すら崩れない。闘志をさらに燃やす余裕すらあった。 まだまだ続く攻防。そこに進展が生まれるのは――このすぐ後であった。
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