タイマン戦 国語VS社会

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ひとつの大きな叫び声。何かが上から落下してくるのを2人は同時に感じ取った。 しかし先に反応したのは銀杏。未だなんなのか分からずにフリーズする武蔵に突進する。動けるようになった時にはもう遅かった――。 上から落下してきたのは銀杏が発動した『くじらぐも』だった。つまり召喚獣対決では銀杏の敗北。銀杏はあえてそれを利用した。 くじらぐもは軽い水蒸気といえど膨大な質量を持っている。表現するなら現生物界最大の大きさを持つシロナガスクジラが降ってくるようなものだ。 だがシロナガスクジラといえど、動く巨大な金属の塊である東大寺盧舎那仏像(とうだいじるしゃなぶつぞう)には勝てない。ハナから負けることを見越して召喚したのだ。まぁそもそも銀杏の手札で勝てる召喚獣はいないのだが。 降ってくる巨大なクジラ。相手はそれだけで萎縮する。視認できなくても思考が焦る。その隙。ある意味では油断と言えるモノを銀杏は狙ったのだ。 建物の3階。今度は武蔵の方がガラスを突き破って蹴り飛ばされた。 「っっち……!!」 目まぐるしく変わる景色。現在地は通路。片側には服屋、もう片方は土産物店がある。ゆっくりと見物していきたいが、そうはいかない。 銀杏が建物の3階にジャンプで入ってくる。人間どころか、動物でも見ることのない身体能力だ。 「『気炎万丈』――!!」 「『永久凍土』――!!」 互いの姿を見た途端に同時発動。銀杏は右手に紅の炎を。武蔵は左手に水晶色の氷を。爆発的に上昇するエネルギーを――互いに放出した。 地獄のような炎。原始時代のような氷。押して押し返す。炎が氷を燃やし尽くし、氷が炎を凍らせる。 「っっ――んなっ!?」 このまま続くと思っていた攻防は――打ち切られた。先に攻撃を止めたのは銀杏。炎が止めば出力の高い氷が勝つのは時間の問題。 一瞬にして炎は鎮火。それどころか極低温まで凍えて凍る。 (出力が負けると見越したか……?) 短い間の戦闘でなんとなくだが銀杏の戦い方も読めてきた。――銀杏は最終的な勝利を求めるタイプ。そのためなら過程や方法は気にしない。 現に先程のくじらぐもは負けることを見越して放った。目先の勝利ではなく、もっと奥の『本当の勝利』に向けて行動できる人間だ。 (なにか……考えつかないような策を練ってきてる) だからといって対策はできない。未来予知もできない以上、氷の壁の向こうで何をしているのか想像もつかない。 「なるほどなるほど。じゃあどんな策が来ようと真正面から打ち消してやるよ」 強気な判断。強気な姿勢。それが通用するほどの自信が武蔵にはあった。
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