月夜のプロポーズ~バナナを添えて~

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 振り返ると、杖を手に持ってローブを身にまとった女の子がニコッと笑っていた。 「……君は?」 「私は魔法使いなの。この世界とは違う世界から来たのよ」  驚いた。僕の他に違う世界からここに来た人がいたなんて。しかもどうやら僕の世界とも違う世界の人らしい。  それより僕は気になったことがある。 「どうして僕が空を飛びたがってることがわかったの?」 「私は人の願望を読み取る魔法を使えるのよ」 「へえ、すごい!」  “魔法”というのが何か分からないが、便利なもののようだ。 「僕、あのバナナを食べたいんだ」 「バナナ?」  僕が空のバナナを指さすと、女の子は急に笑い出した。 「どうしたの? 何で笑うの?」 「だって、あれはバナナじゃないんだもの」 「ええ、でもあの形は……」  バナナじゃなかったら何なんだ? 「あれは月よ」 「月?」  女の子は驚いた顔で僕を見る。 「あなた、月を知らないの?」 「知らない。バナナじゃないの?」 「ふーん……。私の世界やこの世界とはまるきり違う世界から来てるってことか」 「君の世界には月があるの?」 「魔法が存在するってこと以外はだいたいこの世界と似たようなものだもの」  そう言うと彼女は杖を振る。すると大きなバナナが目の前に現れた。 「すごい、大きなバナナだ!」 「これはバナナを魔法で大きくしたものよ。だからもちろん食べられるわ。あなたにあげる」 「え、食べていいの?」  僕はこんなに大きなバナナを一人で食べられるなんて夢のようだと思った。 「その代わり、私のお願いを聞いてくれるかしら」 「お願い?」 「私、明日までに結婚相手を見つけないといけないの。でないとお見合いさせられるから……。でも私の世界では全然いい人が見つからなくて困ってたの。でもちょうど声かけた人がすごくいい人だったわ」 「……つまり?」 「私と結婚してくれる? 私あなたに一目惚れしちゃった」  ふふっと笑う彼女。  僕は、ますますバナナが好きになった。
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