月夜の遭遇

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きれいな月が出ている。 空を見て、確認してから家を出る。 ちょっと近所をぷらぷら歩いて、コンビニでペットボトルのジュースを買って自動ドアを出た。 すると・・ 幼なじみのヒロトが驚いた顔で立っていた。 「なんでこんなとこにいるのよ!」 わたしは怒鳴る。 「・・っ! なんだよいきなり。塾の帰りにハラ減ったからコンビニに寄っただけだろ」 「もう!」 わたしはぷりぷりして家路につく。 (なんなのよ、なんでいつもヒロトなの?) 今までのことを回想する。 次に先生に指名される人・・って思っていたら、理科の先生ってば、 「はい、今、よそ見してた林田君」 とヒロトを指した。 運動会の借り物競走で、わたしを「借りて」くれる人・・なんて思ってたら、 「まりか、来いっ!」 と息を切らしてわたしに手を差し伸べてきたのはヒロトだった。 いっしょに走りながら「なんでわたし?」と聞くと、 「『クラスの異性』なんて、おまえくらいしか気軽に声かけれねえだろ」と言ってきた。 わたしは昔からちょっとした能力がある。 「見えない存在」に尋ねると、正確な答えをくれるんだ。 今回わたしが聞いたのは、「わたしの初めての彼氏になるのはだれですか?」というもの。 「見えない存在」はしゃべれないから、わたしが事前に設定した条件を「見せる」ことで答えてくれる。 理科の時間でも、運動会でも、答えは「ヒロト」だった。 わたしは今度は「きれいな月夜で会える人」と条件をつけていた。 ・・って、もう! 全部「ヒロト」じゃない! ぷりぷり顔のままわたしは家に帰り、そのまま自分の部屋へ直行した。 机の上の日記帳を広げてシャーペンを握る。 『まーたヒロトだった! もうもうっ!!  ……でも、三度目の正直っていうし、これはもう確定よね』 怒った顔を無理矢理つくってみても、口元のニヤニヤはごまかせなかった。
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