第四十八話 赤い福音VSガーディアン達

1/1

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ

第四十八話 赤い福音VSガーディアン達

 都庁の一階ロビーで互いに真正面で撃ちあい、凄まじい勢いで大理石の床の上に死体を生産していく赤い福音の信者とガーディアン達。 「負けるな、死に物狂いで撃て! 大神様の為にもこの建物を我々のモノとするのだ!」  柱の陰から自動ライフルを発砲している葉咲が他の信者達に命じた。  身を隠す事なく特攻隊のように突っ込んで行っては次々と信者達が倒れていくが、信者達は一歩一歩と都庁の奥へ進んでいく。 「畜生、人も武器も数が違う、こっちが劣勢だ。いつまで堪えられるか分からないが、まだ退くな! 怯まず撃ちまくれ!」  機関銃の爆音に負けないような荒い声で鮫山は檄を飛ばすが、弾丸と兵士の物量の差にガーディアンズの中から死傷者が出続ける。 「いいぞ、己の命よりも精霊になる事を選べ、我々には素晴らしい来世が待っている。巨大魔神を我々のものにすべく、祝祭成功のため銃弾に倒れるがいい!」まだ柱の陰にいる葉咲が叫んだ。 「くそ、何としてでもここで信者達を食い止めろ。例え俺達が全滅しても上の階のコクピットだけは行かせるな! あそこを占拠されたら、奴らがこの建物をロボット兵器に変える。上の階のガーディアン達に余計な仕事は与えないままここですべてを終わらせる! 一人たりともコクピットに近づけさせるな!」 *********************************  己の携帯で一報を受けた友川が体を震わせる。 「と、都庁でガーディアン達と教団と思われる集団とで銃撃戦が始まった?」  覚悟をしていたかのように吉城は寡黙なままだ。 「し、しかもガーディアン達が劣勢? 兵隊の数と武器の量が違う?……何よりも教団の連中が死を恐れず、むしろ死を望んでいるかのように突っ込んできている?……」  牧田が怒りを表情にむき出しにして床を蹴った。 「くそ、始まりからこの流れか!」 ********************************    城島と狙撃手が、都本庁舎の西口の入り口前の道路の車の中で自動ライフを構える。 「なんですか、これは? 教団はいったい誰と銃撃戦を? え、まさかあれホームレスじゃ?」 「訳が分からんが一先ず様子見だ。状況が落ち着き次第、俺達も都庁に突っ込んで、あの都市伝説の女を蜂の巣にするぞ!」 ********************************    柱の陰という安全な位置をキープしながら、葉咲が信者に命ずる。 「怯むな、突っ込め。大神への忠誠心を見せるんだ、恐れる事無く次から次に前へ進め! このまま上の階まで上がって巨大魔神のコクピットを占拠するんだ!」  だが、同士討ちを狙うように突っ込んでくる信者達が次々と無駄死をする様が繰り返され、教団の死傷者の数が徐々にガーディアン達の数を上回っていく。  鮫山が照準を絞りながら叫ぶ。 「このまま冷静に一人一人奴らを葬っていけ! 無駄に発砲するな。訓練通り適格に奴らを倒して、この階から先へは絶対に行かすな!」  と、その時、突然、教団の発砲が止んだ。 「?」  鮫山と他のガーディアン達が不審を感じたと同時に、白い煙が静まった空間を勢いよく埋めていく。 「煙幕だ、みんな落ち着け!」  ガーディアン全員が物陰に身を隠しながら、完全に真っ白になった視界の先に銃口を向けていると、その煙の中で何か赤色の物体がうごめいた。 「な……なんだ、あれは……」 「あの形は……人間か?……」ガーディアンの一人が唖然と言った。  そして、その赤い影は煙の中に姿を隠しながらも、猛然とガーディアン達に向かって突進し始めた。 「に、人間にしてはでかすぎる、何なんだいったい!」鮫山の背後のガーディアンが叫んだ。  鮫山は機関銃を構えなおすと、仲間達向かって警戒の声を上げる。 「気をつけろ……な、来るぞ!」  と、次の瞬間、白煙の中から赤いマントを羽織った巨大な肉体が勢いよく飛び出してきた。  ガーディアン達の機関銃の銃声と悲鳴が一階ロビーに響き渡る。 *******************************  自分の携帯で誰かと話終えた吉城向かって、友川が必死の形相で訴えかける。 「応援を! できるだけの数の警官とSATを東京都庁舎に!!」  吉城が冷淡な表情で小さく首を振った。 「それはできない。今、この件はこのまま終了する事との連絡があった。もう首相も他の官僚達も国会議事堂前駅の地下シェルターに避難している。後はこの場所で全てが完了する」  友川が絶望したように両方の肩を落とす。 「ど……どういうことで?……」 「現政府はまったく無関係だったというシナリオで動く。今回はテロではなく、解散命令を恐れたカルト教団の暴動とそれを制圧する警察との闘いという扱いだ。これ以上騒ぎを大きくして政治的問題に発展させないためにも」 「だからなぜですか? 今、現在も東京都庁舎で激しい殺し合いが続いていて、都全体を火の海に変える巨大ロボットが出現する危機にあるんです」 「その心配はない。航空自衛隊が強力に応じてくれた。これからジェット機が都庁向かって出発予定だ……ミサイルを積んでな」  冷徹な表情で言った吉城に向かって、友川が戦慄を受けた表情を見せる。 「い、今なんと?……まさかそんな……私の聞き違いであればいいのですが……」 「平和を訴えてきたわが国が巨大ロボット兵器を製造し隠蔽していたという事実を世界に知られるわけにはいかん、特にアジアの周辺国にはな。今回の件は航空自衛隊の夜間訓練中の事故という話をでっちあげて事を終わりにする。苦しいにも程があるが巨大ロボットに変身した東京都本庁舎が街を破壊しまくる姿を世に見せるよりはましだ」 「しょ、証拠隠しのために都庁を木っ端みじんに破壊する気ですか? 教団の信者はともかく本庁舎の中にはガーディアン達の他に、まだ避難できていない職員や民間人が大勢残っているのですよ……」  牧田が補足するように話す。 「いいや、都庁の全てを破壊するわけじゃない。コクピットのある階を破壊する。コクピットを破壊すれば巨大ロボットとしての発動は不可能。東京都本庁舎はただの建造物のままで終わる」  そこで吉城が久しぶりに感情を取り戻したかのように、無念の息をついた。 「もちろん、被害がまったくでないとは言えない。コクピット破壊のため、あのぶ厚い装甲の建物に数発のミサイルが撃ち込まれることなる。東京都本庁舎の中に残っている者から大勢の死傷者が出る事になるだろう……誠に遺憾だが、これも尊い犠牲と思うしかない……都民の安全とこの国の海外からの信用を守るためのな……」
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加