同居

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*** 「お母さん、……う、うん。お見合い?付き合ってる人はいないけれど仕事忙しいし、無理だよ」 再婚した父から縁談話を持って来られ、母は私に電話をかけてきた。 驚く事に私には父親が違う5歳と7歳歳下の妹がいる。 義父といつの間にか再婚していた母。 普通の家庭を築き、義父妹達は母から大切に育てられた。 私は父親の親戚に引き取らせれた事にされていて、高校卒業してからその事実を母から伝えられ、新たな家族を紹介された時はショックを受けた。 転職と引越しをした事はLINEメールで報告するも、スタンプでの返信で、母は私には興味がない。 「……仕事あるから、切るね」 私が住んでいたアパートの家賃と光熱費等の支払いは離婚した父親の口座から落とされていた。 進学にかかる制服代等も祖父母と父親が工面して用意してくれていた。 LINE通話の内容は聞かれていないはずだけど、頼翔君は察してくれて、私の体を背後から抱き締めて慰めてくれた。 「俺達を放置していた親が言う事なんて、ほっとけばいい。家族じゃない」 同じ境遇の私と頼翔くん。 家族からの愛情を知らずに育った。 お互いが存在があったから、あの貧しくて孤独だった日々を乗り越える事ができた。 「咲良、ずっと俺の側に居てよ。俺が咲良の家族だから」 「うん。頼翔君の側にずっと居るよ」 血の繋がりもなく、恋人同士でもなく、だけど、それ以上に深い関係が私と頼翔君にある。 頼翔君の側から一生離れられないと悟った。
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