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「ただいま、……あぁ、疲れた」
東京出張から帰ってきた頼翔君。
ダイニングのイスにスーツのジャケットをかけ、座るとネクタイを緩め抜きとる。
「おかえり。夜ご飯食べる?」
「食べる。お腹すいた!!」
夜の10時を過ぎていても、必ずご飯を食べる。
帰りの新幹線の到着時刻をあらかじめLINEメッセージで聞いていたから、軽めの物を用意した。
茄子の鶏ひき肉挟み焼きの大根おろしあんかけと、絹豆腐と小松菜のお味噌汁。
「頼翔君、東京に彼女が居たんだね。話してくれたら良かったのに」
「……はぁ?」
茄子の挟み焼きを口に頬張ってる頼翔君の表情が曇る。
「仕事の契約で会っただけだよ。収録スタジオに移動する時にいきなり腕を組んできたから何って思ってたけど、……売名行為に使われたのかも」
ネット記事をスマホで確認した頼翔君は顔をしかめ、怒りを露わにしてる。
「俺、大事故の後遺症で内臓やられたから性欲とか湧かないんだよな。だから、巷で可愛いって言われてる女の子見てもなんとも思わない。背中に醜い傷あるし、だから、彼女とか今まで居た事ない」
「……えっ!?」
傷の位置からして、精巣1つ潰れていてもおかしくない。
半年間一緒に生活してきて、頼翔君に恋人を匂わす事が何もない事を不思議に思っていたけど、まさか、あの大事故が原因で男性機能を失っているとは思ってもいなかった。
「イオリアイだっけ。俺を踏み台に使おうとしたの許せないから、葬らないとね」
イオリアイはヤラセにより売名行為で成り上がっていたのもあり、干されてしまった。
頼翔君との熱愛騒動を仕立てた事がきっかけに、やらせ盗撮隊の存在が表沙汰にされてしまった。
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