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再会
育児放棄はされてはいるけど、高校卒業するまで、母が住処と学費と生活費を出してくれた事に感謝してる。
小学校入学直前に父と離婚し、夜の世界で稼いだお金で私を育ててくれた。
父の浮気による離婚。
女としての自信を失くした母は夜の仕事をする中で愛してくれる人を見つけ、再婚し、新たな家庭を築いている。
私の居場所はない。
高校卒業後、自立し地元から離れて東京に出た私はバイトを掛け持ちしてなんとか生活費と学費を稼ぎ、2年制の専門学校を卒業し、非正規雇用のシステム開発系の派遣会社で5年間実績を詰み、やっとIT系ベンチャー企業に正社員雇用が決まった。
高校生が起業し設立後3年と歴史は浅いがトレンド最先端を突き進みビックになった大手IT系ベンチャー企業。
就職難民の専門学校卒の私を即戦力として正社員雇用して貰えて、嬉しくてならない。
経営陣が大学生という事で、従業員は学生アルバイトが大半。
システム開発の仕事を学生アルバイトや派遣スタッフに分配する業務を任されると思われる。
「おはようございます。本日からシステム開発部でお世話になります浜宮咲良です」
六本木にあるオフィスビル高層階に本店事務所がある。
「伺っており……」
「咲良、ずっと会いたかった!!」
受付担当スタッフの言葉を遮り、大学生ぐらいのブランド物のジャケパンを着た、若い青年が私の前に走って出てきた。
声変わりをして声は少し低くなってるけど、顔立ちは変わらない。
8年の月日が経ち、背はグンとのび、細身だけどガッシリとした男らしい体になった。
「ら、らいくん!?」
彫刻のように美しい端正な顔立ちをした弟みたいに可愛がっていた頼翔くんが私の目の前にいた。
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