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母親代り side 頼翔
小学校入学してまもなくに、母を交通事故で亡くした。
建築関係の職人をしている父は現場を転々とする仕事柄、家には滅多に帰ってこない。
赤の他人は信じられないという理由で家政婦は雇われず、俺は家に1人、放置された。
家事をしてくる人はいない。
食事を用意してくれる人もいない。
地方の仕事に出ると父は3ヶ月は家を空ける。
多めに5万円のお金を渡されていたが、初めての1人暮らし、デリバリーサービスを利用していたらあっという間にお金がなくなり、父の出張が伸びた事で生活費が足りなくなり、路頭に迷う事に。
食品スーパーをハシゴし、半額弁当や半額のパンを購入し、1日300円の予算で食い忍ぶ生活を送る事になった。
「こんな時間に1人で出歩いたらいけないよ」
運動会前で練習疲れから帰宅後に寝落ちし、食品スーパーの半額弁当が並ぶ時間に間に合わなかった俺。
家に帰って激安袋ラーメンを作って食べようとお惣菜コーナーを去ろうとしたら、中学生ぐらいのお姉さんに声をかけられた。
小学1年で成長が遅めで幼児に間違われる俺はよく補導しかける。
午後8時過ぎ、目の前にいるお姉さんも1人で出歩いたらいけない時間。
お姉さんの買い物かごには半額の豚の細切れ肉と挽肉、おつとめ野菜が入っている。
貧乏家庭で半額時間に買い出しに行かされたんだと思った。
でも、温かい手料理を作ってくれる両親はいると思い、嫉妬から苛立ちを感じた。
「親が帰ってこないから、ご飯買いにきた」
「この時間はもうお惣菜コーナーは何も残ってないよ」
空腹でかなり苛立っていた俺は、そんな事分かってると悪態つく。
ほぼ一人暮らしな生活を始めて、4ヶ月目。
小学校の同級生達は両親に手をかけられ甘やかされてるのに、俺は1人で生きぬかないといけない。
かなり精神的に病んでいた。
「今日の夕ご飯のおかずはささみのピカタとほうれん草とエノキのソテー。家に食べに来る?うちもママが夜の仕事してるから家にいない。一緒にご飯食べよう」
そんな俺の内情に気づいたのが、初対面の赤の他人なお姉さんは夜ご飯に誘ってくれた。
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