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男と猫
幼い頃から本を読むのが好きだった私は、ずっと小説家になるのが夢だった。
しかし、いくら応募しても一次審査で落ちてしまって絶望的だった。
それでも諦めずに頑張れるのは、私の飼っているかわいい愛猫のおかげだ。
名前はルナ。
メスの黒猫だ。
私が落ち込んでいる時に側に寄り添ってくれる優しい子だ。
そんな愛猫のおかげで、日々頑張れてこれたが、ルナも高齢の猫になってしまい。
亡くなってしまった。
私は悲しみに明け暮れ、孤独に叩き落とされてしまいすっかり小説を書く気がなくなってしまった。
そんなある日。隣に若い女性が引っ越してきた。
その女性は私に挨拶を済ませた後ご飯作りすぎたからと言って、おすそ分けしてくれた。
食事代が浮くからありがたいことだが何より、若く美しい女性の方におすそ分けしてくれのは嬉しいことだ。
その日を境に。毎日隣の女性からご飯をおすそ分けしてくれた。
ある日おすそ分けのご飯の容器に手紙が添えられていた。
「あなたのこと知りたい」と、いきなりのアプローチだった。
私はつい気分が舞い上がってしまい自分のことを紙に書いておすそ分けの容器に添えた。
「実は小説家目指して小説書いています。」
「ええ!?小説書いているんですか?よかったら今度作品見せて下さい。」
その日から、おすそ分けの容器に紙に添えての文通が始まった。
その女性は、毎日決まった時間に容器をもらいにくる。
「ちゃんと食べてくれました?」と。
その容器に小説の原稿を添えて返す。
そのやりとりが始まった。
その女性もおすそ分けに感想が書かれた紙を添えてくれる。
このへんが面白かった。とか、このへんがよくわからなかったとか。ストレートにアドバイスしてくれて、私はそれを元に再び執筆作業をすることができ、遂に賞を獲得することができた。
本の出版もできた。
あの女性のおかげだった。
しかし、その日からあの女性は来なくなった。
文通が途切れてしまった。
その時になってやっとおかしな点に気がついた。
そういえば名前すら聞いていない。
職業だって聞いていない。
ただ自分が小説家だと明かしただけで文通が始まった。
なんだか夢を見ていたかのような感覚だ。
思い切って初めて自宅を訪ねてみた。
ドアは開いていた。
中は静まり返り、ガランとしていた。
何やら獣の匂いが鼻につく。
玄関の中に紙が添えられていた。
そこには「人間の姿にいられるのは限界がある。
死んであの世にいってもあなたのこと大好きです。
これからも執筆活動頑張って下さい。ルナより。」と
私はその場で膝をつき泣いてしまった。
愛猫は今でも私を見守ってくれているのだと。
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