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オレがパンを口に入れようとした時のことだった。
バキュウゥン!
銃声がした。
同時に熱した鉄の棒で思いっきり突かれたような熱さと痛みを背中に感じた。
振り向くと、少し離れた所に人がいた。
銀髪銀髭に眼鏡の男。オッサンなのかジジイなのか微妙な年恰好の奴だ。猟銃を構えてる。
ダボダボしたズボンに朱色のベストと帽子いう、いかにも猟師っぽい服装だが、どこかで見たような気がする。
誰だったっけ……?
いや、そんなこと考えてる暇はない。
こいつはオレを殺そうとしてるんだ。
「ま、待て! オレは……」
人間だ、と言い終わらない内に、男は引き金を引いた。
銃声が聞こえた途端、オレの左胸に熱と痛みが走り、赤い液体が噴き出す。
オレは地面に膝をつき、横になる。
どうしてこんなことになっちまったんだ……
オレは人間なんだ。少し前まで姿も人間そのものだったんだ。
そう、手術台に寝かされ、麻酔を打たれる前までは。
手術……? 麻酔……?
そういえば、あの医者の顔……
オレは視線を上げ、猟師の顔を見る。
そっくりだ!
まさか、オレを殺そうとして……いや、殺す理由なんてあるのか……
そんなことよりも、苦しい……
助けて、と言おうとしても声が出ない。
目の前が暗くなっていく。
オレは改めて無の世界に突入しようとしている。
今度は……正真正銘……の……ようだ……
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